片想いデュークさん
「それでもあなたが好きです」の続き……だと思いたい

そうとう好き度が増しているようです




**好きでいてもいいですか?



「なぁ、」

 声を掛けられた。
 跳ねる心臓が苦しく痛い。
 しかしそれよりも勝る想いが彼に答えた。

「なんだ」

 息を飲んだのか、彼の喉が上下した。
 些細な変化にさえ反応する自分はなんと愚かなことか。
 ツキリと心臓が痛む。
 暫く振りの再会というわけでもないのに、彼に対する想いは驚く程に膨れ上がっている。
 自分でもわからない想いが渦を巻き、苦しい。

「あの、さ」
「……」

 合わない視線が辛い。
 それでも彼からの言葉を待ち足が止まる。

「オレは、普通の事だと思う」
「…………?」

 言われて浮かんだ疑問符に、彼が答えた。

「前に、アンタ言ったろ。人を好きになるのがどうとか」
「……」
「別に、普通だろ。人が人を好きになるとか、嫌いになるとかそういうのは……だから、可笑しいとか、言うな」
「……」

 ……言葉が、出ない。
 何も浮かばず、ただ彼だけが視界に入る。

「……それだけ。オレ、……用あるから、もう行くな」

 くるりと背を向けた青年は、一歩踏み出す。
 距離が、開く。

「 、」

 漸く出た声は言葉ではなく、ただの音にしかならず歯痒い。

「……なに?」

 引き留める事など出来ぬものかと思っていたが、彼は小さく振り向いていた。
 途端に強張る自分の身体が憎らしい。

「いや……その、」

 自分は何を言いたいのか。

「――私は……、お前の事を好いていても、良いのだろうか?」

 気づけば馬鹿らしい事を、口にしていた。
 気にするなと自ら振ったくせに、増した欲が先の答えを求めている。
 頭に浮かぶのは最も恐る答えだけだと言うのに、それを自ら望んでいるかのように。
 ――もしかしたら、そうなのかもしれない。
 本当は、望んでいるのかもしれない。
 彼からの、拒絶を――、

「……」

 不意に、大きな瞳に捕らえられた。
 あの闇の融ける瞳に、自分の影が映っているのかと思うと息が詰まる。
 映らずとも心苦しいのに、映ったところで良くなるものでもない症状のなんと辛いものか。
 ついと視線が彼の真っ直ぐな瞳から逃げる。

「……好きにしろよ」
「!」

 ぽつりと溢れた小さな言葉。
 思わず顔を跳ね上げさせ彼を見れば再び背を向けられていた。

「アンタの言う、好きとかなんか、わかんねぇけど、オレは……アンタのこと、嫌いじゃない、から……」

 好きにしろよ。
 それが、今日の最後。
 彼は背を向けたまま振り返ること無く町中に姿を消した。
 どうしてその背を追わなかったのか、手を取らなかったのか。
 一人、立ち尽くしている私の胸は、とくりとくりと鳴っている。
 ほのかに胸の奥が暖かい。
 また、彼に対する想いが膨らんだ気がする。
 これ以上、想いが強くなったらどうなってしまうのだろうか。
 小さな不安が過るがしかし、彼の言葉が私を支える、支えてしまう。
 この感情は持っていても良いのだと。
 ――再び彼と出会い、言葉を交わす時間に想いを馳せた。