片想いデュークさん
「好きでいてもいいですか?」の続き







**お願いします、嫌わないでください



 身体が勝手に動いていた。
 本当に、勝手に、腕が、手が、動いていた。
 ふわりと鼻をくすぐった香りに胸が一杯になり、腕の中の心地よい暖かさに満たされる感覚。
 それに心奪われた刹那の間。
 腕に力を込めて、丁度良い高さにある首筋に顔を埋め――る前に我に返った。

「っす、すまない!」

 自らの引寄せた身体を突き飛ばす勢いで青年と距離を取った。
 己が何をしたのかと自問するのも馬鹿らしい。
 弁解も弁明も通用しない。
 自分の犯した失態にただただ詫びの言葉しか浮かばない。
 足取りを乱した彼の手を取り、自分を支えに引寄せたまでは良かったものの、その先の行動。
 ここまで堕ちていたとは恥じ入るばかりだ。
 いや、そんな自分の事など後でいい。

「その……、」

 青年は大きく目を見開いたまま動かない。
 もしや、思っていた以上に強く抱いてしまったのかもしれない。
 引寄せた時に、足を捻らせてしまったのかもしれない。

「大丈夫、か?」

 声を掛けると彼が瞬いた。
 そしてゆっくり此方を見上げ、目が合った。

「……」

 澄んだ闇色が美しい、等と感心している場合ではないとは思っても、間近に見る彼は本当に美しく魅入ってしまう。

「……」

 しかし彼はスィと目を逸らし、背を向けた。
 そのまま無言で開く距離。
 以前のように引き止める事はできなかった。
 ただただ胸の内で詫び続け、許しを請い願う。
 もう、戻れぬのかもしれない。
 いや、この想いを打ち明けた時からそうだったのだ。
 私はただ彼の優しさに甘えていただけだった。
 私が好んでいた彼との他愛のないやり取りは、あの時からぎくしゃくと不自然なものに変わっていた。
 それなのに、わかっていたのに、彼が言葉を返してくれる毎に甘え、一方的に想いを募らせ――最低だ。
 胸の内で渦巻く自己嫌悪に浸り、彼の背が見えなくなっても私は一人立ち尽くしていた。