帝光 仲の良いキセキ達
妄想と捏造が酷いです
結論⇒赤司様の計画通り
**
帝光中学校、家庭科第一調理室。
「これは何事だ」
その入り口で赤司は一人立ち尽くしていた。
「おい紫原、緑間、青峰、黄瀬、黒子……」
一人一人の名前を呼んでも誰一人として反応しない。
「いったい何故……、……いや、まさか、な……」
倒れた皆を前に、赤司は今日のやり取りを思い返す。
「赤司っちって料理もできるんスね」
始まりは黄瀬の言葉だった。
練習開始間際のことだ。
「すごいよねー。流石赤ちん」
「唐突になんなのだよ」
「いや、さっきセンセーに聞いたんスよ」
調理実習の時間で赤司が作った料理が大変すばらしく、また一つ天才赤司の伝説を増やした事を。
「そうなんですか。でも、確か調理実習って班別評価ですよね?」
「そうそう!そこなんスよ!なんとそれなのに全員評価AのS!」
「マジかよ」
帝光中学での班別評価はグループ内の個人個人の評価を付けた上で付けられる。
例え班の結果が良くても誰か一人でもサボっていたりしたらその分班の評価は下がってしまう。
全員が一致団結して取り組まないとなかなかA、ましてSランクは取れない。
「下準備段階を任せて、味付けをオレがしただけだ」
「って、赤司っちは言うけど、その下準備が凄かったんスよ」
聞いた話だけれど、と黄瀬は言う。
普通誰かしらサボるものが居るのだが、赤司は誰にも負担が無いようにした上で公平かつ適切な役割を与えていただとか。
材料の切り方を一度、其々の食材担当ごとにかなり高度な飾り切りをレクチャーし、其々の細かな評価を上げていただとか。
赤司の組み立てた流れるような時間分担で、流しや包丁、コンロなどとても複数人数で使っているとは思えないような連帯を見せていただとか。
どこの厨房だと言いたくなるチームワークを見せていたそうだ。
「それくらい当然だ」
「……普通じゃないのだよ」
「どこがだ?包丁使いの苦手なヤツに評価の関係上切りやすい食材を一つ二つ握らせて、後は洗い物担当にしたり、使える女子には少し複雑な飾り切りを覚えてもらっただけだ」
「普通じゃないのだよっ」
調理実習個人評価Aでも班評価はB止まりだった緑間が大事なことなので二回言った。
「それで、味もすっごくおいしかったんだってー」
紫原がちょっと食べたかったと溢すのを聞いて黒子も頷いた。
「そうですね。そこまで聞くと食べてみたいですね、赤司君の料理」
人に教えられるほどの包丁捌きを披露し、教師も感動させる完璧な味付けの評価Aクラスの料理(個人評価はAが最高だ)。
見て、食べてみたいと思うのは普通だろう。
それも今や校内で知らぬものなどいない天才、我らが帝光中バスケ部キャプテンの手料理。
「あー、確かに。食ってみてぇな」
「そうだな。評価Aの包丁使い。味付け。今後の参考にさせてもらいたいのだよ」
「赤司っちー、今日五時上がりっスよね?」
「赤ちん、オレ楽しみにしてるね」
「待てお前ら。確定か、今日オレが作るのは確定なのか」
珍しく一致団結しているメンバーに向けて言えば、黒子がじっと赤司を見つめて言った。
「駄目ですか?」
「……」
別に作りたくないわけではない。
ただ、そんなことをしている時間があれば練習に費やしたいだけだ。
特にまだ自分たちは身体のできていない中学生。
確実な勝利のためならばまず基礎から固めねば。
そこまで思って、彼は閃いた。
「よし、いいだろう」
「マジっスか!」
「その代わりオレが作ってる間お前たちは特別メニューだ」
「げっ!?」
思わず潰れた声を出す青峰を横に黒子はいつになくキリリと顔を引き締め言った。
「赤司君、やっぱりボクはいいです。また今度の機会に、」
「なに?オレの作った料理が食えないって?」
「……いえ、慎んで頂かせて貰います」
輝く笑顔に思わず手を合わせてお辞儀をする敗者。
「紫原、お前も楽しみにしているんだよな。緑間も楽しみにしているといい」
「……うわー……」
なにもかもが遅かった。
赤司の組むスペシャルメニューを全員が完遂しなければいけない事が決定した瞬間だ。
「いやでも、待てよ……?」
未だに誰一人として起き上がらない調理室内で赤司は不自然さに気付く。
皆、練習に疲れきって寝てしまったのかとも思ったが、それにしては変だ。
なぜならついさっきまで、皆自分の作った料理を食べて、一緒に話していたのだ。
疲れた疲れた言うもののちゃんと作った料理も完食し、後は片付けのみとなり、赤司だけは先に帰ると廊下に出ても青峰や黄瀬の非難する声も、緑間の声も聞こえていた。
それが何故――、
「つっかれたーーっ!!」
「赤司っちキチクっ!!」
「今日は流石に、やりすぎなのだよ……」
「甘えるな。それぞれ許容範囲内なはずだ。そこまで負荷を加えるわけがないだろう」
「でも赤ちーん、黒ちん死にそーだよー?」
「」
「黒子、蚊の泣くような声を出すくらいなら喋らない方がいいのだよ」
「まぁともかく座りなよ。出来てるから」
料理を並べて席に促す赤司に従い皆が席に着く。
「……これ赤司っちが作ったの?」
「お前たちが言ったんだろう」
黄瀬は目を丸くしているが、簡単な汁物と炒め物の二品だけだ。
とはいえ、見た目は家庭料理とは思えない出来に仕上がっている。
其々食材の切り方や盛り方に何らかの技巧が使われているのが素人目でもわかる品だ。
「おいしそー」
「確かに凄いな……。その前に、この食材はどこから持ってきたのだよ」
「もちろん、学校の物だ」
「いいのか?勝手に使って」
「愚問だな」
「……」
どういう意味かはわかりたくないと切り上げる緑間。
「テツ、大丈夫か?」
「……なんとか……」
ぐったりとしているものの、喋れるまでは回復した黒子は並ぶ美味しそうな料理を見て「はあ」と息を吐いた。
「……今なら、この倍食べれそうです」
「じゃあなにか追加で作ろうか」
「結構です。すみません無理です」
「お前は食べれるときに食べておいたほうがいいぞ」
「家でも食べますから今日は遠慮しておきます」
「それもそうだな」
「赤ちん、食べていいー?」
お腹すいたー、と言う紫原に続いて青峰も声を上げる。
「だな。いいよな赤司ー」
「ああ」
「いっただきまーす!」
聞くが早い、黄瀬が最初に手を伸ばした。
「ん、んまい!」
「どれ……、」
「おいしーよ、赤ちん」
「マジ、お前できないものとかねーのかよ」
「さあね。考えたことも無いな」
おいしいと皆が喜び食べ、あっという間に空になる皿。
「ほんと、美味しかったですね」
「黒子っち、意外にマジでもっと食べれたんじゃないスか?」
「談笑してる暇は無いのだよ」
緑間が時計を見て言えば、皆も気付き声を上げる。
「えー、もう六時過ぎてんの?」
「つか七時じゃんか!」
「気付かなかったのか?」
赤司が平然と言う。
「お前たちが来たのだって六時過ぎてたぞ」
「わー、今日早く帰るって言ってたんだけどなー」
紫原が大して慌てた風でもなくいえば、黒子もしまったと紫原とは違って本当に焦っているように声を漏らす。
「ともかく片付けだな。皆、頑張れよ」
「はあ?お前はなにすんだよ」
「赤ちん帰るの?」
「ああ。食いたいと言ったのも食ったのもお前たちだろう?オレは先に帰る」
片付けと戸締りよろしく。
言って荷物を持って立ち上がる赤司。
「ちょ、待てよ赤司!ちったー手伝え!」
「ズルイっスよ!赤司っちのメニューでオレらへっとへとなのに!」
「赤ち〜んっ」
文句を垂れる三人に緑間と黒子はしょうがないと息を吐く。
「黒子、お前は座っているのだよ。フラフラされては邪魔だからな」
「はあ、助かりますけど、そこのみんなは動くんですか?」
「動いてもらうしかないのだよ」
「じゃ、頑張って。今日は早く寝ろよ」
理解力のある二人に手を振って赤司は廊下に出る。
「赤司!」
「赤司っち!」
「煩いのだよ二人とも!」
「」
「」
「ヤだよ!なんでオレが!」
「そりゃ食べたいっつったのオレらスけど!」
ぎゃいぎゃいと騒ぐ声が聞こえるがそれで歩みを止める赤司ではない。
さて明日の練習はどうしようかとプランを考えていると、悲鳴のような声が上がった。
「黄瀬君っ!」
それも珍しい、声と口調からして黒子だ。
滅多に大声を出さないのもそうだが、ただならぬ感情的な声に思わず足を止めた。
「青峰っ!紫原っ!どうし……っ!」
「緑間君!」
続く緑間の声も様子がおかしい。
途中で台詞は切れるし、想定外の出来事に恐慌しているようにも聞こえた。
「……いったいなにが起きてるんだ」
振り返るとそこには当然唯一つ明かりの点る調理室。
しかし廊下は静まり返っている。
不気味だ。
つい先ほどまで騒がしいの一言だったこの空間が妙な静寂に包まれている。
「……」
一応、全員バスケ部員。それも自分を除いたレギュラー。
なにか、よくはわからないが何か起きていたとしたらその責任は主将である自分になにかしら問われるのではないか。
最終下校時刻はまだだが、不安が過ぎる。
のは建前だ。
それ以上に好奇心のほうが強くある。
一体何が起きたのか。
口元に笑みを浮かべながら踵を返して赤司は調理室に戻って来た。
そして冒頭である。
「想定外だな」
倒れているチームメイトを見てそう溢す。
いや、倒れているまではいい。
ただ事ならぬ雰囲気に、次々消えていく声だとかそういうのでこれくらいのことは想定範囲内だ。
しかし、叩いても踏みつけても反応しないとはどういうことか。
呻き声は上げてもそれ以上の反応が無い。
なぜそこまで意識を失っているのか。
この倒れている四人の、今日この場限りの共通点と言えば自分が作った追加メニューをこなした事と、自分の作った料理を食べたことくらいだろう。
練習メニューには全く問題ないはずだ。
其々の限界には達していないはずだし、身体にショックを与えるほどのメニューは作っていないと断言できる。
ならば料理か。
だが料理だって特別変なものは使っていない。
使った食材はこの調理室にある冷蔵庫から拝借したものだけ。
そりゃ、練習後ということもあってプロテインだとか栄養サプリメントは色々と混入させた。
プロテイン単品で飲むよりその方が摂取しやすいだろうし、効率もいいだろうと考えてだ。(他サプリメントも然り)
実際、美味しいと言いながら中身を知らぬうちに皆食べていた。
単にプロテインだけなら絶対に文句を言う奴が居るのだからこれは大変良案だろう。(他サプリメントも然り)
まさかそれらが人体に悪影響を及ぼすことはあるまい。
が、しかしそれ以外にこれと言って原因になりえそうなものが思いつかない。
「……検証はまた今度するか」
幸いというかなんというか、最終下校時刻にはまだ時間があるし、プロテインも摂取したばかり。
ここで寝てもまったく問題ないどころか若干プラス。
今回は時間の都合上少し残念だが、考えようによっては良いこと尽くめではないか。
食べてすぐ寝れる上に栄養満点、筋肉増強に効果抜群。(天才赤司目算による他社比)
ただそうすると、成長ホルモンが活発になる夜10時頃を狙ってこの症状を引き出したいところ。
くつりと赤司は笑った。
「合宿が楽しみだな」
その後目覚めたバスケ部レギュラーの面々は、幸か不幸かその前後の記憶が曖昧になっており、一時間ほど気を失うように眠っていたということしかわからなかった。
赤司もその間のことは語ることなく、狐につままれた気持ちでこの日は皆帰って行った。
そしてそれは長い夏と冬の合宿で、メンバーの知らぬ間に繰り返されるのであった。
***************************
「なんてことが気を失っている間にあったら嫌だなと思いました」
「ってか赤司ってたしか、」
「帝光中の元キャプテンです。そういえば彼の手料理を食べた後は記憶が飛んでいるなと思い出しました」
「……それは、」
「もちろん、カントクの手料理を食べた感想です」
***************************
---------------------
評価とか 成績とか 順位とか付くものは完璧で
それ以外はどこか抜けてる赤司様っていいじゃない
しかしそんなことでさえも未来への布石に変える彼はやっぱり最強だよね
と思いながら書いて
書き終わった後に
火神君の家で起きた事件の後に赤司様の料理疑惑についてなんか話していたら愉快だなと思いました