赤黒
**≠キス
「テツヤ、おいで」
素直に従って彼の目の前まで歩いていくと、なんだつまらないと返される。
「逆らったら面倒じゃないですか」
正直に言うと彼は楽しそうに声を立てて笑う。
「うん、テツヤのそういうところ好きだよ」
「そうですか、ボクは君のそういうところが大嫌いです」
「テツヤ、キスして」
「……ほんと、なに考えてるんですか君」
それでも逆らうと面倒、というよりもなにをされるかわからない恐怖の方が強く、結局言いなりになるしかない。
彼の手を取って、そこに口付ける。
「無難なところを選んだね」
唇と手を彼から離して、ボクは溜息を吐いた。
「それで、気は済みましたか?」
もう帰りたいんですがと言外に言えば、彼は「だめ」と妙に子供っぽく言った。
「今度は僕がキスする番だから――大人しくしててね」
すぐさま踵を返してダッシュしたくなったボクはしかしビクンと跳ねただけ。
顎を掴まれて思わず息を呑んだ直後に唇が重なった。
それだけならまだしも、彼はボクの唇に吸い付き、噛みつき、舌をねじ込み始めた。
これがキスですかと文句を言いたくなる行為はボクにとってはとてつもなく長く続き、軽く酸欠状態にまで陥った。
ようやっと離れた唇はきっと赤くなっているんだろう。ひりひりする。
ぐいと手の甲で違和感のある口元を拭うとぬるりと濡れるような嫌な感触。
「鼻で息をすれば良いのに」
「……ぅる、……さい、です……」
そんなこと考える余裕も暇も何もなかったのだからしょうがないだろう。
くすくすと笑う彼は非常に楽しそうで非常に不愉快だ。
「僕に殺してほしいの?」
「……んで、そ、……な、んですか」
「遠慮しなくて良いよ。テツヤが望むならそうしてあげる」
だからどうぞ、息を止めていて。
言いながら再び彼はボクに歪んだ笑顔を近づけた。
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赤司様の突飛な行動に慣れているテツ君な話
だと思う←