笠松と黒子(若干黄→黒)










**次も次もその次も



「大変だな、お前」

 笠松は思わず労わりの声を掛けたくなった。

「そう思うなら代わってください」
「いや、そりゃ無理だろ」

 黒子っち〜っ、どこっスか〜っ。
 情けない後輩の声を聞きながらその黒子っちと目を合わす。

「……黙っててくれませんか?」
「最初っから言うつもりねーから、安心しな。もう帰るし」

 誠凛の参加する練習試合を見に行くと言う黄瀬に付いて来た会場。
 試合は既に誠凛の勝利で終わり、後は選手も観客も帰るだけだ。
 笠松も勿論黄瀬を連れて帰ろうとしたのだが、黄瀬がどうしても黒子っちに挨拶したいと言って一時別れたのだ。
 別れた後笠松が向かったのはトイレ。
 用を済ませ、さて待ち合わせ場所に戻ろうかとしたところで「こんにちわ」と声が掛かった。
 うおっと驚いた彼の横にはいつの間にやら後輩がやたら気に掛けている元チームメイトがいて、笠松は心底驚いた。

「どうも。黄瀬君がお世話になってます」
「どっ、どうもって……、そりゃどうも」

 なにやら変な感じのする挨拶だが心臓がバクついて追求できない笠松。

「試合、見に来てたんですか」
「あ、ああ、黄瀬のヤツが煩いし、まあ……、敵情調査も含めてな」 
「そうですか」

 淡々と喋る黒子のペースに笠松も落ち着きを取り戻す。

「そういや、お前に会いに行くって黄瀬が控え室向かったけど、会わなかったのか?」
「そうなんですか。それは面倒ですね」
「面倒って……」

 いや確かに巻き込まれている自分も黄瀬の相手は面倒なのだから当事者である黒子は更にそう思うところが強いだろう。
 しかしあまりにも淡々と言っているせいでどこか他人事のように聞こえる。

「笠松先輩、できれば黄瀬君を連れて早く帰っていただけませんか」
「アイツが納得すればな」
「そこは先輩の権限を使って何とかしてください」
「それで大人しく言うこと聞くのかアイツが。つかお前結構言うな」

 外見とは違って結構図太い神経を垣間見た笠松が言えば、黒子はけろりと「そうでしょうか」なんて返してくる。
 そんな他愛ない会話をしている間に黒子も用を済ませてしまい、なんとなく流れで一緒に出て行くと、黄瀬が黒子を探し回る声が聞こえた。
 咄嗟に物陰に隠れる黒子。それを見た笠松が掛けた言葉が冒頭の台詞だ。
 近付いて来る黄瀬の声は大きいわけでもないのに馬鹿みたいに通る。
 透明少年もかわいそうに。
 というか黄瀬に羞恥心と言うものは存在しないのか。
 アレが後輩で、本日の連れだと思うと恥ずかしい。
 まるで迷子を捜しているかのように名前を呼びまわられている黒子はその倍恥ずかしいだろう。
 というわけで。

「あれ、笠松センパっいだ!」
「なにしてんだテメェ。いい加減帰っぞ」

 ぱっとオレを見つけて駆け寄ってきた黄瀬に、回し蹴りをお見舞いしてやり黄瀬を止めた。

「ええ〜っ、オレ黒子っちにまだ会ってないっス」
「知るか。さっさとしろ」
「そんなぁっ!横暴っスよ!」
「どこがだっ!」

 げしっとまた蹴ると「痛いっ」と泣きながらも、黒子のことは諦めたようで落ち込んだ声で名残惜しいと嘆く。

「うぅーっ、せっかく会えると思ったのにーっ!黒子っちに会いたかったなー。もー、今度は直接学校に行った方がいいスかねー?」
「知るか。練習はサボるなよ」
「一日くらいいいじゃないスか。オレ、モデルもやってるんスよ」
「どういう理屈だ!シバクぞ!」
「あだっ!」

 背中を押すように蹴られ、前のめりになる黄瀬が慌てて体勢を整えている間に、笠松はチラリとさっきまで黒子が居たほうを見る。
 黒子はまだ息を潜めてそこに隠れていた。
 早く行けという意味を込めて軽く手で合図を出す。
 目が合うと、黒子はぺこりとお辞儀をして奥へと駆けて行った。

「先輩、どうかしたんスか?」
「なんでもねぇよ」

 くるりと前に向き直り黄瀬と並ぶ。

「お前、次も来るのか?」
「え、まぁ。予定が空いてれば黒子っちの試合は見に来たいっスね。先輩も来ます?」
「そうだな、予定が空いてれば」
「そんなこと言わずに、練習ならお休みにすればいいじゃないスか!」
「そういう意味じゃねぇよこの馬鹿!」

 本日何度目かの蹴りをキめて、笠松は思う。
 黄瀬は一体なぜこんなにもあの透明少年に気を掛けるのか。
 元チームメイトということだけで、普通練習返上してまで試合の観戦をしに行きたいと思うか?
 まあ、誠凛の試合を見てスカウティングしているのだったら自分がそうだからわからないでもない。
 けれど、黄瀬は誠凛の試合というより黒子と火神を見に来ているように思える。
 なにを考えているのかはわからないが、何故か見張っていないとなんか危ない気がする。
 人様、しかも他校生に迷惑を掛けられては困るのだ、主将として。
 ひそりと、できる限り黄瀬の行動に注意しようと心に決めた笠松だった。
















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IH予選決勝リーグで笠松先輩が観戦に来てくれなかったのは
用事があってしょうがなく、どうしても行けなかった!
ってのを妄想してる