氷黒















「――不思議ですね」
「何が?」

 静かに、だが暖かい笑みを浮かべる氷室に、本当に不思議だと黒子は言った。

「どういうことだい?」
「人生、何が起こるかわからないものだなと、改めて思ったので」
「そんなに不思議なことかな?」
「ええ、」

 黒子が氷室に初めて会ったのは高校一年の夏休み。
 ストバスの会場だ。
 その時はお互い知り合いの知り合いという、遠い関係だった。
 学校だって、東京と秋田で物理的にも離れている。
 部活としてならばライバル同士。
 年も一つ離れている。
 共通点と言えるものはあったが接点といえるものは無かったはずだ。
 なのにも係らず、高校を卒業した今ではその知り合いも、お互いが好きなバスケも抜きにこうして顔を合わせている。
 どころか、恋人同士という枠組みになんて収まっている。
 本当に不思議だ。
 まさか同性とそんな関係になるとは、ただの知人であった氷室とそんな関係になるとは、あの夏の自分なら言われたって想像もできないだろう。
 彼と親しくなったのはいつからだっただろうか。
 思い返してみても記憶は曖昧で、いつの間にか彼が隣にいて、それが当たり前になって、彼に告白されて、驚いて、嬉しくて、戸惑いながらも頷いた高校最後の夏の記憶の方が鮮明だ。
 あの時自分は嬉しかったのだから、間違いなくその前に彼に対して好意を持っていたはずなのに、いったいどのタイミングで、どう恋に落ちたのか分からない。

「とても」

 それでも今は、今でも、氷室とのこの関係は続けたいし終わらせたくないのだからきっと随分前から惚れ込んでいたのだろうなと思い、少し恥ずかしくなる。
 はにかみ笑う黒子に、何を思ったのか氷室は「そうかな?」と笑みを深めた。

「オレは、経過がどうであれ、これは至って当然の成り行きだと思うよ」
「そうでしょうか」
「疑ってるのかい?」
「まさか」

 とんでもない。
 黒子が言うと、極自然に居住まいを正した氷室は流れるような動作で黒子の手を取り、言った。

「じゃぁ、返事を貰えるかな」
「ええ、勿論。喜んで」

 ――YESの選択肢しか無いことは分かっていても、それを言わせるのは、言わせたいと思うのは当然だろう。
 氷室はこの時をずっと待っていたのだから。
 日本に帰ってきて、高校で知り合った一癖も二癖もある後輩から聞いた、噂だけの存在。
 ほんの少し興味を持っていただけのその人は自分がアメリカに居たときの弟分とも知り合いで、何年振りかの日本の夏で初めて出会った。
 そこで実際に言葉を交わしたのはほんの一言二言。
 それなのに彼に対する興味は驚くほど膨らんだ。
 選手としても、一個人としても。
 好奇心から冬の大会で対戦した後、後輩を丸め込み、元弟分をダシに使い、交友を深めている間に唐突に自覚した感情は所謂恋というもので、自覚してからは感情の波に溺れっ放しだったのだ。
 しかしここは同性愛に対して波風強く偏見の強い日本。
 しっかりと確実に足元を固めて、着実に距離を狭めて漸く得た恋人という立場だけでは満足いかない。
 それでなくともここは意外と敵が多いのだ。
 足元だけでなく周りを固めて、柵を作ってもまだ足りない。
 それも当然だ。
 恋なんかではもう物足りなくなっていたのだから。
 それ以上の形が、愛が、証明が、黒子本人から欲しかった。

「連れて行ってください。ずっと、隣にいさせてください」

 想い続けて、もう何年も経った。
 それでも想いは褪せることなく色付き深まるばかり。
 確実性を高めに高め、ようやっと口にすることのできた言葉への返事に、氷室は相好を崩した口の中で呟き零した。

「――Perfect」
「ぇ、わっ、」

 不意に手を引かれて驚く黒子の手の甲に、氷室は素早く唇を押し当て軽いリップ音を鳴らした。
 あんまりにも突然、あっという間のことにぱちくりと瞬く瞳に映る自分を間近に見て、今度は聞こえるように囁いた。

「これからもよろしくね、ハニー」




**アメリカ行きのチケットは用意してありますのでご安心を












「、えっと、こういう場合はダーリンと返した方がいいのでしょうか?正直かなり抵抗が……」
「じゃあ、テツヤがハニーって言ってくれるのかな?」
「どちらもお断りしたいです」
「それは残念だな」




















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最後の方がぐだるの私の残念クオリティは不滅

ところで突っ込みどころが多すぎて突っ込みきれない私がいるんだがとりあえず
氷室さんのプロポーズっぽいセリフなんか一度も考えてないし言ってないのにいつの間にか言ってることになってしかも渡米して結婚することになっているっぽいんですけどどういうことですか