エイプリルフールネタ

 

**嘘は言っちゃいけません

 

 エイプリルフール前夜。
 ゼロスは予め準備をしていた。
 と言ってもそんな大変なことでもなんでもない。
 ただ、愛しのお馬鹿さんに「明日喋るときは逆の事を言わなきゃいけない日」ということを伝えただけだ。
 嘘をついてもいい日から、嘘をつかなければいけない日と信じ込ませ、なにをどう言えばいいのかと混乱するロイドが大変見たくなったのだ。
 絶対、可愛い。
 常日頃抱き付けば離れろと言われ、愛してると言えぱウザいと返されるゼロス。
 明日はどんな可愛いことを言ってくれるのだろう。
 おそらく、自ら誘うような事をうっかり口走ってくれたりして、たくさん言われるのだろうと思うと自然に顔が緩む。
 早く明日になあれっ!
 ……なんて思っていた数時間前の自分に涙した。
 エイプリルフール当日。
 ベッドから身を出し、誰よりも早くロイドに挨拶せんがため廊下に躍り出たゼロス。
 はしゃぎすぎだとかなんだとかいうのは勘弁して欲しい。
 だっていつも誘い文句よりウザいの一言のが多いのだから、夢を見させてくれたって構わないだろう。
 と、ゼロスが三歩スキップすると廊下向こうに人影が映る。

「ハニ〜っ」

 赤い服と、逆立った髪を見てゼロスは三倍速で駆け寄った。
 くるりと振り向いたロイドは、

「うよはお」

 良くわからないことを口走った。

「は?」

 呆けている間に後ろからコレットがとたとたとやって来た第一声。

「どいろ、よはおー」
「うよはお!」

 なんだこれは。
 コレットまでもが不思議な事を言い始めた。
 しかもロイドはそれをまるで不思議がっていない。
 更には会話のようなものを始めた。
 夢?これは夢?
 それともたった数時間の睡眠をとっている間に全世界共通語が変わってしまったのだろうか。
 まるで理解できない。

「ねだ、きんて、いい」
「なだーそ、ああ」

 呆然と事の成り行きを見守るしかできない。
 そんな黙り込んだままのゼロスに気付いた二人は純粋無垢、汚れの無い目でゼロスを捉えた。

「すろぜ、だんたしうど」
「のいるわ、いあぐ?」

 その時、はっとゼロスはあることを閃いた。
 が、しかし……本当にそうなのだろうか。だとしたら相当……。

「すろぜ?」
「……あのね、二人とも」

 疑問符の付いた呼び掛けに確信した。

「逆にって、そういう意味じゃないのよ?」

 一瞬の沈黙。

「なんだよそれっ!!」
「じゃあ普通に喋ってもいいの?」

 がうと叫ぶロイドと見るからに安堵するコレット。

 昨日すっげぇ練習したんだぞ!?」
「よかったねー。わたし、絶対舌噛んじゃうって思ってたんだー」
「ほんと、噛む前に嘘ってわかってよかったな」
「ね〜」

 変なところで持ち前の天然っぷりと器用さを見せないで欲しい。
 エイプリルフールでもないのに嘘を吐いたバチが当たったなと、ゼロスは軽く頭痛のする頭を抱えた。