**GOGOプレセア

 

「ロイドさん」

 明日からの予定がほぼ決まり順番に風呂にでも入ろうかと話が切り上げられた直後だった。

「なんだ?」

 まさかこの後に起きる騒動なんて予想もなにもできるわけがない。
 ロイドを含め全員がいつものように返事をしたり、聞き耳を立てたり然り気無くいつものようにロイドの背後にのし掛かったり、まるで明日の準備をしているかのように荷物を出し入れしていたりと各々で行動していた。
 この一言を聞くまでは――。

「一緒にお風呂に入りましょう」
「 ぶはっ!!!!!!! 」

 盛大に吹いたのはロイドだ。
 天使聴力か愛の力かわからないが、聞き取ったコレットは作中では見られない物凄い形相をしているが誰も気付かない。
 ロイドの後ろに張り付いているゼロスはあまりの想定外の言葉に表情さえ失って呆けている。
 仲良く無意味な行動を繰り返していたリフィルとしいなは目を見開き、何度も袋と外を往復したそれぞれボトルと食材は手から滑り落ち明日の荷物決定となった。
 この時一番早く正気に戻ったのは幸か不幸かロイドだった。

「……ゼーロースゥゥウウウ!!!!!!!!?」

 こんなたちの悪い冗談の出所は決まっていると、ゼロスを引き剥がし滅多に使わない鉄拳を繰り出そうとすると両手を上げて降参された。

「待った待ったんま!!!!!!!見に覚えがねーよ!!!!!!」

 その必死な様に否定することができず、寸止めに成功したロイドは顔を真っ赤にして叫んだ。

「じゃ、じゃあいったい誰がっ!!!!」
「ロイドさん」

 ばっと振り向くとすぐ近くにプレセアがいた。

「プレセア……」
「嫌、ですか?私と一緒に入るのは」

 そう言う問題ではない。
 しかし、目に見えてしょんぼりとしおれたプレセアに慌ててロイドは何か言おうとするがうまい言葉がでない。

「いやっ!!嫌っつーか、なんつーか、さあ!!」

 口ごもるロイドに横からコレットが進み出る。

「嫌じゃないならプレセアじゃなくてわたしと入ろうよ!!」
「根本的になんか違うぞコレット!!」

 ロイドが声を張り上げるが二人とも聞いていない。

「それは私の台詞です」
「ロイドはわたしと入りたいの!!」
「オレ一言も言った覚えないんですけど!!」
「私と入った方が絶対気持ちいいです」
「わ……わたしだって!!」

 すかさずアピールするプレセアにコレットも対抗するが、誘われているロイドは話を無視され、常日頃にモテモテなのは大変だと溢すゼロスに救いを求めたが、残念ながらその思いは届かなかった。

「ロイド君とはオレ様が入るの!!こればっかりは譲れないぜ!!」
「オマエもかっ!!!!」

 素早く取り出したハリセンでゼロスを叩く。

「プレセア……とコレット。ここは混浴はなかったはずだ。混浴の浴場が無いかぎり、男女が同じ風呂に入るのは年長者として、保護者としては感心できないのだが?」

 年長者という単語に厭に力が入っていたのは気のせいではないだろう。
 ロイドはまともな援護がかかったことに素直に心の中で拍手大喝采。
 リーガルは本当に頼りになると好感度が急上昇中。
 そのためか、料理研究会ジーニアスと一緒に宿の調理場にお邪魔していると思われていたリーガルがいつの間にか戻ってきていたことには誰もツッコまなかった。

「そもそもなんでこんな事をいい始めたのだ」

 場を仕切るリーガルにプレセアはいつものよう淡々と応えた。

「教えていただいたんです」

 何をと首を傾げたロイドにプレセアは続ける。

「仲良くなるには裸の付き合いが一番だと」

 本にもそのようなことか幾つか記されていましたのでと言われたがそれはまたやはり、

「……ゼロス?」
「ちがうって!!信じてよハニーっ!!」

 じゃあ誰がと誰もが思った時だった。

「……ごめんなさい」

 意外なところから謝罪の言葉がもれた。

「せっ先生っ!?」

 リフィルが実に申し訳なさそうに皆から目を反らしていた。

「ごめんなさい。でも、まさかロイドに対しての話とは思ってなかったのよ」

 ロイドに対してだとわかっていたら別の案を伝えていたと言うリフィルにしいなが問う。

「例えば?」
「トマトりょ……いえ、何でもないわ。肉料理をご馳走するとかかしらね」
「なんか、不穏な単語が聞こえた気がする……」

 赤い実の名前が気のせいなのかなんなのか聞えたため顔をしかめるロイド。
 兎に角と話を戻すリーガルは大変現実を見ていた。

「プレセア。お前のロイドに対する好意は分かったが、その、なんだ」

 年を考えろとは言えず、少し模索すると閃いたように声をあげる。

「そう、年頃の娘として恥ずかしくない態度を取らねば」

 言外に含まれた意味に気付かないほど、プレセアは子供ではない。

「……わかりました」

 今までの言動、行動を考えると意外なほどあっさりと身を引いたことに多少の驚きをリーガルが感じ、ほっと(気分的な意味で)胸を撫で下ろしたのはほんの数秒のことだった。

「ロイドさん。大事な話があります。後で部屋に来てください」
「ああ。いいぜ」
「まてまてまてっ!!!!」

 大の男二人と女教師が制止の声をあげる。

 因みに本日の宿は一人部屋だ。

「プレセア。私が言いたいのはそう言うことではない」

 大変珍しい早口言葉を喋るリーガル。

「ロイド。女の子の部屋は例え誘われても軽々しく訪ねるものじゃない」

 いつになく真剣なゼロス。

「え、あ、ぁあ。悪い」

 そんな二人の様子にロイドは思わず謝った。

「もうこの話はここでお開きにしましょう」

 若干青ざめたようにも見えるリフィルにリーガルは軽く頷いた。

「プレセア。私こそお前に話があるから少しここに残っていてくれないか。たぶん、リフィルもお前に用があるだろう」
「ええ。もちろん、時間の都合がつければで結構よ」

 そんなことを言いつつ、目ではここに残りなさいと厳しく言っている。

「……わかりました」

 怯みこそしなかったが、プレセアは厳かに首を縦に振った。

 もちろん、この後に始まったのは保護者による外見のみ幼い保護者への文字通り教育的指導と道徳の授業だった。