にょたロイド
それでも良ければスクアーロ

 

 

 

**一瞬でも流されそうになった自分が悔しい

 

 

 愛しのロイド君は今日も朝早くから剣術稽古。
 それに付き合うオレ様はまだ完全には開かない目を擦りながらも剣を振るう。

「……ゼロス」
「なによ」

 剣先を引っ込められてこちらも同様に引けばロイド君は怒った。

「真剣に付き合ってくれよ」
「……真剣に、ねぇ」

 これは勿論ロイド君の剣を適当にあしらうオレ様に対してで、一人の男としての意味で無いことは相手がロイドの時点でわかりきっていた筈なのに一瞬期待した自分が憎い。

「だってさぁ、寝みぃんだもん」
「だから、夕方にって……」
「なんで疲れきった体で更に疲れることしなきゃあかんの!!」

 むぅと膨れっ面をするロイドに頭を掻く。

「だいたい、なんでそんなに強くなろうとすんの」
「当たり前だろ?」
「当たり前、ねぇ?」

 女の子にしては背が高くても、声が低くても、髪をワックスで逆立てていても、胸が寂しくても、ロイドは女の子なのだ。
 今までは隠していたけれど、既に今ではロイドが女の子だったことは殆どの関係者が知っている事実だ。
 普通の女の子ならば、戦わない。
 コレットもしいなもリフィルも戦ってはいるけれども、ロイドのように前線にはでない。
 プレセアは……確かに女の子で前線に出てきているけれども、メンバー入り直後。
 「危ないからなるべく下がっていてくれ」と言ったロイドに、「効率が悪いです。私は平気です」と言い返したプレセアは「女の子なんだから、そんなあぶないことさせられない」と言われて引き下がった。
 それからはどうしても人手が足りない時に前線に出てきているだけだ。
 その時のロイドはまだ自身も、一部を除いた周囲も男だと思っていた時だったが、その信条は今でも変わっていないらしい。
 それなのに、どうして、なぜに女の子のロイドは危ないから下がろうとしないのか!!

「あのさ、お前、仮にも女だろ?」
「あんましそれ言うなよ。なんかむずむずする」

 ついこの間まではどうしてだか男だと疑いもせず生きてきたロイドはなかなか自分が女である事実を飲み込めないでいた。

「でも、そうだろ、そうなんだよ」
「ぅ……まぁ、な」

 変に気合いと気迫を持ったゼロスに詰め寄られて半歩下がるが圧迫感がなぜか増した。

「お前がプレセアちゃんに言った台詞そっくりそのまま返したいんですけど?」

 人差し指が額に突き立てられて、形のいい爪が刺さってちょっと痛い。
 そんなこと言える立場じゃないのはなんとなくわかってしまって黙ってされるがままゼロスがぶちぶちと吐く小言を聞く。

「いちおーね。今やってる稽古で間違ってロイド君に怪我させたらどうしようとか」

「前で突っ走ってるロイド君が怪我しないかとか心配してんの」

「女の子は大人しくしてろなんて言わねぇけどよ、言いたいの、わかる?」

「わからねぇなんて言わねぇよな」
「う……ん」

 確かに、ゼロスの言いたいことをロイドは理解できたが、まだ、どうしても自分がその対象だと言う自覚が持てていない為に曖昧な返事しかできなかった。
 そんなロイドの心境を汲み取ったゼロスは心の底から保護者のダイクの教育方針を憎んだ。
 男として育てるにしても、いくら正体を隠さなくちゃいけないにせよ、始めにほんとは女の子なんだということをイヤと言うほど教え込んでいてくれてさえいればナニか変わってたかもしれないのに!!!!!

「頼むから、少しくらい守らせてくれよ」

 正直、好きな女の子に最前線で戦われちゃあ男の立つ瀬がない。
 若干項垂れて、肩をすくめたゼロスにロイドは困った顔をし、

「それはできない」

 即答。
 あんまりにも早い返答に目を丸くしたゼロスにロイドは続ける。

「だって、オレは、みんなを守るために戦ってるんだから」

 そんな男前な事をいつもの輝く笑顔とともに愛する彼女に言われてどうして胸が跳ねたのか。
 ゼロスはもう自分は末期なんだと深く息を吐いた。