**誰も知らない一夜
「ありゃりゃ〜。寝ちゃったの?」
部屋に帰ってきてみれば、同室の少年は既に寝ていた。
当然だろう。
なぜならば、もう暫くすれば深夜ではなく明け方になってしまうような時間だ。「まっ、いーけどね」
ベッドに腰を掛け、適当に仮眠でもとろうと決めると、青年は横になった――途端、跳ね起きた。
「っ!?」
唸り声が聞こえたのだ。
「……っだぁ。まぁたかよ……」
実はこれが初めてではないし、一々驚く程のことでもないのだが、突然上がる声に青年は度々驚かされていた。
「ロイドくーん。キミ、うるさいよ〜?」
相手が完璧に(夢見は大層悪く)熟睡しているということは今までの試みから分かっていたとしても文句の一つや二つは言わないと気が済まない。
「オレ様のキチョーな睡眠時間を……」
「ごめ……なさっ……ぅっ……めん…っ…さぃ……」
「……」しかし、ごめんなさい、ごめんなさいと繰り返される言葉の中に、苦し気に唸る声を聞くと鼻をつまんでやろうとか、おでこに落書きしてやろうだとかいう気が失せてしまう。
「……なんなんだよ、お前」
普段起きて行動してるときは誰よりも前に立って、笑いながら真っ直ぐ歩いてる少年。
昼間の姿と違って、酷く小さく見える彼に最近になって何故だか手が伸びる。
少し身を乗り出せば、隣のベッドに寝そべる少年の頭に手が届くからかもしれない。
意外に硬くない(猫っ毛でもないけど)頭を撫でてやると徐々に落ち着きを取り戻していく。「なにやってんのかねぇ?」
ほっと胸を撫で下ろすなんてことはない。
心の中は非常に冷めている。
別にこの少年が苦しんでいる姿を見たってなんとも思わない。
ただ呻いているのを聞いて、うるさいと感じただけだ。「だから、そうゆー顔されても困るって」
少年の見せた表情に思わず笑みを溢していたことには気付かず、夜は明けた。