けんかばかっぷるな二人



**早く家に帰ろう



「いい加減解れよっ!」
「それは私の台詞だ」

 感情に任せ声を張り上げたユーリに対してビシリと声色厳しく返したデューク。
 公道で行われている、美形二人のやり取りは注目の的だった。

「もう我慢ならねぇ。お前なんか湧いてくる人混みに押し潰されちまえ」
「それも私の台詞だ。お前はどうも無頓着過ぎる。こんな状態で今までどうしていたんだ」

 ピリピリと張り詰める空気。
 互いの怒気が露になる。

「どうしたもこうしたもねぇ。そりゃお前の勘違いだ。要らねぇ考え巡らすより先にすることあるだろ」
「アレか?アレなのか。あの騎士が今までお前を守っていたと言うのか?」
「守られるまでもねぇ。お前こそ今までどうしてたんだ。はんっ、オレは別に気にしねぇよっ。アンタが誰と何してようがな」
「そのような誘いに乗ったことはない」
「あるんだ!やっぱあるんじゃねぇーかっ!もうぜってぇお前なんか誘わねぇっ!」
「私がいなくて誰がお前を守るっ」
「だからっ、いい加減解れよ!」
「それは、私の、台詞、だっ」

 堂々巡る、二人のやり取り。
 既に察している勘のいい人もいれば、なんだなんだと囃し立てる者もいる中、相も変わらず二人は声を上げる。


「オレは、男女問わず無差別無意識に誘惑しちまうアンタとは違って普通なんだよ!」
「お前は自身に向けられる好奇の眼差しを把握できないのか。お前こそ男女問わず無差別無意識に誘惑して、そんなに私を困らせたいのか」
「そんなことないっ」
「私とてない」
「分からず屋」
「鈍感」
「鈍感はアンタだ、馬鹿」
「愚かなのはどっちだ、自分の容姿を鏡で見てみろ」
「アンタこそ自分がどれだけ美人なのか三回回ってよく見てみろ。世界が回っても歪まねぇ美人の恋人が街中彷徨ってる相手の気持ちを考えやがれ。いくら神経があってもたんねえよ」
「お前こそ、人の型をとった紫水晶がごとき美しさに目の眩んだ者共の邪な視線に気付け」

「ああっ、連れてこなけりゃよかった」
「全く、付いてきて正解だった」

 ほぼ同時に吐き出した台詞の直後、二人はいつの間にか出来た人垣を割り進んだ。

「ったくなんなんだ今日は……、今日に限って……」
「人が多いな……何か催し物でもあるのか……?」
「かもしんねぇけど、絶対見ないぞ」
「当たり前だ」

「これ以上人目に付けるもんか」
「これ以上人目に付けるものか」

 被った台詞と共に、今、彼らの思いは一つだ。