「あっ、はぁ……」
力が抜けて、座り込みそうになった身体を支えたのはフレンの左足だった。
「大丈夫?歩ける?」
「も、少し待てよ……」
「じゃぁ、ここでやってもいいかな?」
「は、あ?」息を整える時間が欲しくて言った言葉は曲解な受け取り方をされたようだ。
ユーリは信じられないといった目で見たがフレンの特殊スキルによって華麗に無視された。「そうと決まれば……あ、でもやっぱ横になった方がいいよね?机まで歩ける?」
「ちょ、待てよ」ユーリはフレンの胸元を掴み、制止の声を上げた。
「冗談、だろ?だいたいお前、さっき準備、しにいったって……」
「あぁ、うん。大丈夫。準備万端、いつでもできるよ」にこやかに、ただ少し息の荒いフレンに本日何度目かの悪寒を感じる。
「そ……それに、お前、忘れ物とやらはどうした」
「え?ああ、……これだよ」
「……それって」親指より一回り大きい銀色の平たい楕円から細く棒状に伸び、徐々に緩やかな曲線を描く面になり、先端が三つに分かれた金属製のそれ。
「フォーク?」
「うん」紛れもなく、誰がどう見てもフォークだ。
「てか、その手で触んなよ」
せっかく綺麗に洗ったのにも関わらず、精液でべとべとの手でそれを掴んだフレンに顔をしかめると、またもやにこりと満面の笑みを浮かべられた。
「な……んだよ」
「フォークって、ズルいよね」
「はぁ?なにいっひぅっ、つめたっ!!」突然意味のわからないことを口走ったかと思ったらフォークの面になっている部分を胸板に押し付けられた。
その冷たさに思わずビクリと身体が跳ねる。
フォークが身体と垂直に立てられ、触れるか触れないか、つぅーっと軽く引っ掻くように移動していく。
胸板をゆっくり円を描くように滑るその感覚にだんだんと、なにか別の感覚が混じっていく。「んっく……」
「だって、ユーリの口に何度も出入りしてるんだよ?しかもユーリに全身洗ってもらったりもするんだよ?ズルいよ」
「ぃ……っだ」よくわからない口上に文句を言う隙もなく、つんと胸の突起を刺され走る痛みに顔をしかめた。
「痛いってフレ……んひっ!!」
おもむろに、ユーリのはだけた胸元へとフレンの顔が近付き、舌が胸の飾りを転がした。
「ぁ、やめ、ろってぇ……」
「ユーリ、どっちの方が気持ちいい?」打って変わってすぅーと、愛撫のように三叉の金属が肌を滑り、左右の突起をそれぞれフォークと舌が刺激する。
ぬるりと湿った生暖かいものとと慣れない無機質な冷たいものとの、左右違った感覚になにがなんだかわからなくなりそうだ。「んっふ、ぁ」
「……ん、引き分け、かな?」ふっ、と固く立った乳首に息を吹き掛けられ、ひくんとユーリは身体を震わせた。
「っのバカ」
「酷いな」
「あっ、ちょ、ばっぁあっ、やっ」すぅっとフォークが移動を始め、ユーリの性器に突き立てられた。
「痛いっ!!」
「でも、気持ちいいんだよね?」
「んなわけ……いっ!!あ゛っひぃぃいっ!!」尿道の入り口に三つに分かれ細く尖った先端を滑らせ、ぐりくりと刺激する。
あまりの痛さに悲鳴をあげ、痛みから逃れるために身を捩ったが、フレンの支えと、背にある流し台のおかげでやっと立っているような身体では思うようにいかない。
生理的な涙が目端に浮かぶ。「僕の指じゃあここまで触れないのに、ずるいよね」
「やぁっ!!は、なせっ、あっひいっ」今まで胸を弄っていた手も下りてきて、中心を軽く握り扱き始めた。
ガクガクと足は震え、押し寄せる痛みと抗えない快感にどうにかなりそうだ。「あっひぐ、はっ、ゃっ……うあっ、やっ、なん、で……」
すっと激痛を与えていたフォークが離れ、指がいやに優しく先端をなぞる。
ビクビクと震え、既に限界に近付いていた己のモノに驚愕するユーリ。「そんなにフォークが好き?」
なにを勘違いしたのか、フレンが悲しそうに眉を下げて手を止めた。
完全に勃ち上がったものが熱の解放をできないまま天を仰ぐ。「はっぁ……ふ、れん……」
「ユーリの……ココも、もしかしてフォークが好きなの?」
「っ!!」股下をくぐり、濡れた指が後孔に触れた。
「な……ぁに、考えて、る……?」
「わからない?」
「……へん、たい」
「ユーリ限定のね」流石にこの体制だとやりにくいと、身体を支えていた足が抜かれた。
そのまま重力に逆らうことなく流し台へ寄り掛かりながら、どさりとユーリが崩れ落ちる。「って……ぅあっ」
ぐいっと足を持ち上げられ、ヒヤリと冷たいものがきゅっと閉じられた蕾に当てられた。
「やっ……まさか、本気……じゃ、ないだろ?」
紅潮していた頬が一気に青ざめ、ひきつった顔のユーリが震える声で問うと笑顔が返ってきた。
刹那。
グッと、異物が尻穴に押し込まれた。「い……っだぁああっ!!」
「おかしいなぁ?太さがないから簡単に入ると思ったけど……」先の割れた方を持ち、フレンが握っていたせいか少しぬめりけのある平たい楕円の柄がぐいぐいとユーリの内へと押し進められていく。
「いたいっ!!変態っ!!馬鹿!!死ね!!!!」
「力抜いてよユーリ」
「お前が抜け!!!!」きつく閉じた後孔に柄の先が少し入ったところでフレンは手を止めた。
ユーリがほっと息をするのもつかの間、足を持ち上げていたフレンの手が先のやり取りで少し萎えた雄を捕らえた。「や、んんっ!!」
ゆるゆるとした刺激に、再び昂る熱。
あと少しでも強くされたらどうにかなってしまいそうで、意識がそちらに逸れたとき、一瞬弛んだ後孔にフォークが突き立てられた。「っああ゛っ!」
柄を全て呑み込んだそこは、銀色に光る途中三叉に分かれた面積の広い部分だけが外に出ていて酷く卑猥だ。
「どうしよ……。これでユーリが食べさせてくれるなら、嫌いなもの無くなる気がする」
「変態っ!!」自分の今の姿を思い、あまりの恥ずかしさゆえに頬を真っ赤に染めたユーリがフレンを罵るが、対して気にした素振りを見せずフレンは改めてフォークに手を掛けた。
「やっ、ぅあ゛あっ!!」
ぐるりとフォークが半回転し、腸壁を押し上げた。
持ち柄の細い所とは違い、奥に当たる平たい部分がイヤにその存在を主張している気がした。
奥には有るのに入り口付近に感じるものが少なく、妙に気持ち悪い。
ぐるりとまた抉るように半回転し、一周する直前に身体が跳ねた。「ひぁああっ!!」
「こう?」
「や、いたい!ぃたぃいっ、あ゛っ、ひぃああっ」ぐりぐりと角度を変えて回るそれが前立腺を掠めるたびに嬌声があがる。
しかしどうも長さの問題か太さの問題か、或いは形の問題か、異物感と激痛の方が多く感じて、稀にクる快感に頭の中がスパークする。
その感覚を少しでも和らげようと身を捩るが意味がない。「も、ゃだ、これ……ぃやだぁっ」
ついにボロボロと涙を溢し、頬を濡らすユーリの目尻にフレンはあやすようにそっと口付けた。
「ごめんねユーリ。これ、嫌い?」
「き、らいっ、ゃ、だぁ……」
「わかった」
「っ!」思い切り引き抜かれ、ズキズキじりじりと痛むそこに、いつの間にか露になった熱いものがぴたりとくっついた。
「ひっ……ゃだ、まっ」
「ユーリなら、平気だよ」
「やっ、あ゛、ぃぁああ゛っ!!」何が平気なのか、フォークよりも質量のあるそれがゆっくりと埋め込まれていく。
痛い熱い痛い苦しい痛い。「い゛だいだいだいやぁぁああっ!!」
文字通り身を割く痛みに泣き叫ぶユーリ。
浅いところで抜き差しされてるものの、質量が半端無い。
奥へ向かうそれは出入りを繰り返す度に徐々に滑りをよくして更に奥へと向かっていく。
フレンはふと思い出したようにユーリの性器に手を掛けた。「うっ、ひっ、やっいたいぃっ!!あっ、ひぃうっ!!ああっ!!」
優しく、時には強く中心を扱きながら、挿入を続ける。
全てが収まった時には、ユーリの悲鳴には快楽の色も見えていた。「ね、へいき、だった、でしょう?」
「ぁ、はぁ……ふ、うっ」ユーリは浅く呼吸を繰り返したが、それもまたすぐに動き始めた雄に翻弄され思うようにいかない。
「ぃや、った、んあ、ひっ!」
揺さぶられる度に襲う痛み。
それよりも、幾度と身体を重ね開発された場所を突かれて起こる快感に身を震わせ声を上げてしまう。「うっ、はぁ、あっ、ふああっ!!」
何度も寸止めをくらい、妖しく動くフレンの手の内で、今もまた絶頂を望む自身。
早く解放されたい。
前後から攻め立てられたユーリはもう限界だった。「あ、はぅ、ふっ、れん、もっ……」
無意識の内に回していた腕がフレンの背中をぎゅっと抱き締めた。
「ぼく、も……っ、いっしょに、イこ?」
「ぁっ、ふれ……っあ、ふっ、あっ、あっぁああ――っ!!」
「ぅ、くぅあっ!!」律動が早まり、強く腰を打ち付けられるのと同時に自身を強く握られてユーリの身体が一際大きく跳ねた。
締め付けられたフレンの熱が一泊遅れてユーリの中で爆ぜた。
* *
「お前なんてイカに頭をぶつけて死んじまえ」
「酷い……」
「どっちがだ」痛む体を引きずり支え、場所を寝室へ移動した二人。
ユーリはうつ伏せに力無く転がっていた。「頭痛い肩が痛いケツが痛いどこもかしくも痛い」
「ご……ごめん……」場所が場所の上、体勢も体勢だった為ユーリの身体を揺さぶる度に、彼の頭やら身体を流し台や床に打ち付けていた事を今更ながらフレンは気付き謝った。
しかも、彼と繋がった場所は自分の抑えが効かなかったせいで無理矢理こじ開けてしまった為、血が滲んで見るからに痛々しい。
そのおかげで滑りが良くなったとはいえ、傷付けたことは全く変わり無い。「ほんとに、ごめん……。ちょっと抑えらんなくって……。あっ、でもちゃんと一回しかしてないよ!!」
一番最初の文句を聞いていたのかと一瞬目を見張ったが、すぐにそんなの当たり前だと鼻をならした。
「何度もやってられっかこんなの……。だいたい、たったの3日で盛りすぎなんだよ馬鹿」
ぶつぶつと言われる文句を聞いていたらふいに名前を呼ばれた。
「……なに?」
恐る恐る訊ねると、痛みのためか顔をしかめたユーリがぼそりと言った。
「なんでアレ……入れたんだ?」
「……ああっ、アレね」小首を傾げたフレンがぽんと手の平を打つような動作をすると、突然口ごもった。
「なんだよ」
「いや、その」だから、と続けて出てきた言葉は行為中にも告げられた意味不明なことだった。
「……で?」
「だってそれにっ、ケーキ食べる時なんか君、幸せそうにはむはむするし、舐めるし、ずっとくわえてるしそれ考えたら……最近やってなかったし……」だんだんと頬を紅潮させ拳を握り締めるフレン。
その理由を考えたなくなってきた。
もういい。
けれども止める前にフレンが妙に照れた顔で言ってしまった。「たぶん、僕は嫉妬してたんじゃないかな?」
フォーク相手に。
そんな理由でオレはあんな痛い思いをしたのかと、外傷的な痛みとはまた違う頭痛もしてきた気がする。「くだらねー……」
ユーリは溜め息と共に瞼を閉じた。