付き合ってる二人



**虫歯にご注意



「甘いものが食いたい」

 唐突な欲求。
 しかしそれを満たす術はない。

「甘いものが食いたい」

 わかってはいても欲求は強くなるばかりで、叶いそうもない願いを口にし続ける。

「甘いものが」
「いい加減にしないか。ここにそんなものはない」

 当然、どうしようもない願いを聞き続けていた方は、ほんの少し苛立ち混じりに返した。

「わかってるけどさ、食いたいもんは食いたいんだよ」
「それはわかったが、それこそわかるだろう」
「わかってるってば」

 それでも、とユーリは続けた。

「甘いもの、食いたい」
「……」

 禁断症状かなにかかと疑いたくなる程に甘味を要求するユーリに、デュークはひとつ頷いた。

「わかった……」
「ん?」
「そこまで言うなら用意してやろう。お前の口に合うかは知らんがな」
「ええ?」

 今この場に甘味が無いのはわかっているし、デュークも持っていないのは知っている。
 それなのに甘味を用意すると言ったこれは、何のつもりなのかと呆けているユーリの右手を掴み、拾い上げた。
 それをくいと口許まで運び、

「なにぅをあえっ!?」

 食んだ。
 ぱくりと口に指先から銜え込み、しゃぶる。

「ちょっちょっちょおっ!」

 強張る指、逃れようと引寄せる手に構わずデュークは逆に引寄せてその指を丹念にしゃぶり舐める。
 指先だけでなく、根元まで。
 一本だけでなく、二本三本と唾液に塗みれていく。
 時折ぢゅっと音を立てて吸うくせに、わざと唾液を溢して濡らしていく。
 くすぐったいのと気持ち悪いのと視覚的に妙にエロイという、わけのわからない奇行に顔を紅くしながらユーリは待ったと連呼する。

「待った!待った!ほんと待っあ、え、っむ!?」

 ふと突然力の均衡が崩れ、ぐいと逆にデュークを引寄せる形になり、驚く間に重なった唇に重ねて驚き頭が回らない。

「ぁ、っ、」

 唇をなぞる舌の動きにひくりと反応した身体が小さく声を漏らした。
 濡れた唇が乾いた唇を濡らす。
 誘われるがままに、より深く交わし合う口付けに翻弄される。
 どちらのものともとれない唾液が唇どころか顎まで濡らし、二人が離れた後も一時の間銀糸が二人を繋いでいた。

「……私の甘味、気に入ったか?」

 くすりと艶かしく光る唇が弧を描く。

「……きっ、きにっ、気に入るも何もおまっ」

 顔の赤らむユーリの手をデュークは再び手にとった。
 今度は左手。
 まだ綺麗な左手に軽く口付けて濡れた跡を残す。

「まだ、ほんの一部だからな。まだ要るか?」

 続いての甘噛みに、示唆された先の事を理解すると同時にユーリは頭を勢いよく振った。

「いやいいっ!もういいっ!」
「そうか。……なら、」
「っぅわ!」

 不意に力強く手を引かれてバランスを崩す。

「先に戴かせて貰おうか、甘いもの」

 倒れかけた身体は支えられただけでなく、しっかりと腕に抱かれて動けない。
 吐息が触れ合うほど迫ったデュークはくすくすと笑う。

「…………虫歯にでもなっちまえ」

 ユーリはソレに、悔し紛れに噛みついた。