始祖の隷長?ズ(笑)
**無題
「オレ、つい最近気付いたんだけどさ」
「なんだ」
「始祖の隷長みたい」
「……?」
どういう意味だと首を傾げる男に青年は、彼自身戸惑っているのか、らしくなくまごついていた。
「いや、だからさ、よくわかんねぇんだけど、違うのはわかってるんだけどなんか違うみたいでさ、たぶんそうなのかなって思っただけっちゃだけなんだけどよ、それが一番しっくりくるんだよ」
「もう少しわかるように言え」
焦れた男が苛立ち混じりに言うと、ぐっと青年は息を飲み込んでから、躊躇いがちに口を開いた。
「……、……始祖の隷長」
「……なに?」
「始祖の隷長の変種、なのかも」
「変種?なにがだ」
「オレが」
食べなくても平気。
最近はラピードやバウルの《声》みたいなものをはっきり聞くことができるし、時々魔物の《声》みたいなのも聞こえる。
エアルの流れなんか気にしたことは全くなかったはずなのに、それ以前に感じたこともなかったはずなのに、何故か目に見えるような気がする。
その、目に見えるエアルの溜まり場らしい場所に近寄ると喉の渇きが無くなる上、少し調子が良くなる。
「どう思う?」
青年は真剣そのもので尋ねたが、男は話に付いていけなかった。
「……どう、……と言われても……」
自分に聞かれても困る。
そもそも始祖の隷長は生物が長い時をかけ世界の守り手として進化した存在だ。
ただの人間、それもまだ半世紀も生きていない人間が成れるものではない。
せめて後一世期過ごしてから言って貰おうかと男が返そうとすると、青年は妙な事を言った。
「先輩なんだから、ちったぁ後輩の面倒みてくれよ」
「先輩?」
男が訝しげに青年を見つめる。
「そうだよ。だってお前は始祖の隷長になったんだろ?どんな感覚なのか教えてくれよ。オレはホントに始祖の隷長なのか?」
変わらず真剣な表情に、滅多に笑わない男は一笑した。
「私が?始祖の隷長だと?」
なにを馬鹿なことをと嘲り、これ以上頭の可笑しい青年と会話しても自分まで気がふれそうだと背を向けたその時。
鋭く青年が問い掛けた。
「最後にものを食べたのは何時だ」
「何?」
思わず振り向き身構えてしまうほど、斬り込んできたような問いにこれまた思わず瞬間的に過去を振り返った。
ところで、おやと曖昧な記憶に自ら眉を顰めた。
少なくとも、昨日一昨日は食べていない。
それなのに空腹を感じていない。
男がいやまさかと更に過去を振り返り、最後に口にした時と物を思い返している間に、青年が二問う目を投げてきた。
「アンタはどうしてここに居る」
「それは……」
辺境のエアルクレーネ。
ここに来たのはつい数節前と比べて、また、他のエアルクレーネと比べてエアルに偏りがあり、上手く循環されていなかったから。
ここに来て宙の戒典の力で鎮めようと思ったからだ。
しかし言われてみれば確かに、エアルの淀み等、普通の生身の人間にわかるのか。
「だいたい、アンタ、前に魔物と会話してたじゃねぇか」
「会話、など…………」
してない。と、言い切れるのか。
自分でも怪しく思えてきたのは、言葉にせずとも意思の疎通が人間以外の生物と確かに取れていたからに他ならない。
「……始祖の、隷長……?」
まさか。
そんなことがあるはずなどない。
なにかとんでもない間違いをしている。
そうに決まっている。
そう頭で否定しているのに、どこかで何かが引っ掛かる。
それ以上何も言えず、暫くの間デュークは茫然と立ち尽くしていた。