**わかってた。けど諦められなかったんだ
「ファーストエイド」
「烈震ドロップ!!」
「……」
「どーしたの青年」余所見は禁物よ〜、と言いながら矢を放つレイヴンこそ戦闘中なのに緊張感がないとユーリに怒られた(?)。
「鬼神千烈ノック!!」
「オレはちゃんと仕事してんよ」
「トライスラッシュっ」
「おっさんだってやってるわよ」
「烈旋スマッシュ!!」
「どうだか」
「フレイムフォロウ」
「酷いっ!!」
「烈震ドロップ!!」ばっさばさと敵を切り伏せていくユーリが突然振り向いた。
「えっなに!?」
「……なんでもねぇ」くるりと素早く向き直り次の相手に斬りかかる。
「えーなに!?なんなの!?今のなんだったの???おっさん気になって夜も眠れない!!」
「じゃあ今から永眠してろ」
「酷すぎ!!」
「二人とも真面目に戦ってよ!!!!!」ついに首領からのお叱りが無駄話をしている二人に下った。
「わりぃ」
「ごめんよー」やっとこさ(主にカロルの活躍により)戦闘を終えた四人は流石に息を吐いていた。
「ユーリ、なんだか珍しく戦闘に集中してませんでしたね」
エステルが言うとレイヴンが食いついた。
「ほんとほんと。おっさん疲れちゃったわよ」
「おっさんが言うなよ。一番働いてたのはカロル先生だろ?」
「そう思ってたならちゃんとしてよ……」
「悪かったって」いつもの調子で謝るユーリにカロルはため息を吐いた。
「でもほんと、どうしたの?最近ずっとだよね」
「そうなんです?」
「うん」いつもと違って妙にこっちに気を配ってる気がするんだとカロルが言うと、レイヴンが囃し立てる。
「いやだわ、少年にユーリが取られちゃうっ」
「もともとオレはカロルのだ」
「えっ!!ちょ、誤解を招くような言い方しないでよ!!!!」
「ズルいですカロル……」
「エステル、その台詞はちょっと……」顔を赤らめたりゲンナリさせたりと忙しいカロルの頭をぐりぐりと撫でると、ユーリはもう一度悪かったと謝った。
「次からはしゃんとするよ」
「ほんと?」
「ほんとほんと……落ちてこないことは充分よくわかったから」
「え?」
「なんでもねぇよ」ぼそりと呟かれた台詞はよく聞き取れなかったが、ユーリの一瞬だけ見えた寂しそうな悲しそうな、複雑にも儚げな表情にその場にいた者の胸が跳ねた。
「ほら行くぞ。ラピード達が待ってる」
先に町に行って宿の確保をしていた先行隊のことを思い、のんびりとだが歩き出したユーリの背が少し離れたところでカロルらが動揺の声を上げた。
「え、え、なに今の!!」
「どうしましょう!!わたし、どうすればいいんでしょう!?」
「おっさんちょっと添い寝してくる!!」
「何いってるの!!!????」パーティ内一位の攻撃力を持つカロルがレイヴンを叩いてその場は治まり、少し遅れてユーリを追いかけた。
* *
「やっぱなかった」
「あらそう。それは残念ね……少し期待していたのだけど」
「アイツに期待する方が間違ってるわ」
「あら、リタだって結構乗り気だったじゃない」
「あんたたちに言われたくないわね」
「そりゃ悪かったな」
「なんの話?」宿に着いて皆の待ちに待った自由時間。
ユーリとジュディスとリタが宿屋の一角にある休憩スペースでなにか話し込んでいたのを発見してカロルは近寄った。「あら、カロル」
「どうした。流石に疲れたか?」
「それもあるけど、三人が見えたから」まぁ座れよと提供してくた椅子に腰を掛ける。
「で、なんの話?」
「あんたの技の話」ぶすっくれるリタとにこりと笑うジュディス。
カロルはクエスチョンマークを浮かべてユーリに聞いた。「なに?」
「だから、そのまんま」わかんないよと小さな癇癪を興したカロルにジュディスが答えた。
「烈震ドロップ使うときに、飴がそのバックから落ちてくれば面白いのに、という話をしてたのよ」
えっ、と目を丸くしたカロルはユーリを凝視した。
「ま、まさか、冗談でしょ?そんなわけないじゃん」
「いや、カロル先生なら落ちるドロップと飴のドロップを掛けてくれるんじゃないかと思って」たけど、何度見てもそんなことはなかったとユーリが軽いぼやきに近いことを呟いた。
そういえば、戦闘中に視線を感じるようになったのは先日ナンから技を教えてもらってからな気がしてきた。「……なんだか、なんだろう……」
すごく聞きたくなかったと、カロルは肩を落とした。