ほの悲しい
**僕らは何億分の一の草
「ユーリ、どうかしたの?」
「別に」
そう言いながらユーリはぶちぶちと一面に広がる草を毟っていた。
誰がどう見ても、何かあったのかと聞きたくなる様子だ。
「なにかあったの?」
「なんもねぇよ」
そう言いながら緑色だった手元の地面はもう乾いた茶色になっている。
なにか珍しく悩んでいるのだろうか、悩みに比例してこの茶色が広がっていくのであればなにか僕にできることはないだろうか。
目の前いっぱいに広がる草原のほんの一部だとしても、彼のストレス発散のために毟られていくのはかわいそうだ。
傍目から見ても他とは全く異なった場所になってしまったそこが、元通りになるのにだってかなりの時間がかかるだろう。
「ねぇユーリ」
「なぁフレン」
ほとんど同時に言って、二人して口を閉じた。
風が吹く。
ユーリが毟り取った草が風に飛ばされた。
小さな山になっていた草はきっとこの草原に散らばっているんだろう。
「……探せないよな」
ユーリが言った。
「流石のお前でも、お手上げだろ」
ははっと、軽く笑ったユーリは僕に向かって言った。
「意地張って探すなよ?」
「探すわけないだろう」
この、不自然に土が見える場所でなく、飛んで行ってしまった草を探すとなれば不可能に近い。
当り前のことを言われてそう返した僕にユーリは笑った。
「はははっ」
悩みが解決されたのかどうかはわからないけれど、気が済んだのだろうか。ユーリは土に汚れた手を払って立ち上がった。
そしてそのまま、不自然に笑いながらユーリは何処かへ行った。
行き先は聞いても振り向きもせず笑ったまま、答えてはもらえなかった。
そしてそのまま、何処かへ行ってしまった。