付き合ってる二人






**初心に帰る




「キス、してもいいか?」

 言われて呆けたオレに向かってデュークはこてんと首を横に倒した。

「駄目か?」

 駄目かとか聞かれても困る。
 困る、というか、反応に困るのであって、キス自体に困ってるわけじゃない。

「……なんで?」

 正直キスなんてもう何度もしてるし、正直いつも互いに許可なんか取ったことないし、今更なんでわざわざ宣言するのだろうか。
 やりたけりゃ好きにすればいい。
 今は二人きりなわけだし、恐らくデュークが言い出さなければきっと自分から仕掛けていただろうし。
 なにも断る理由は無いが、ただただ今更の言葉に疑問を返した。

「なんで、とはどういう意味でだ?したくないのか?」
「いや、んなこたねーけど。今更じゃん」
「まあ、確かにそうだが、」

 ふむと納得したかのように頷くデュークは続けて言う。

「なんとなく、言いたくなった」
「ふーん」

 まあ、なんだっていいけど。
 思いながら、オレもなんとなく聞きたくなって聞いてみた。

「キスって、どこにすんの?」

 昔もなんかそんなことを言った気がするなと、そう昔の話でもないはずなのに思い返す。
 まだまだ付き合い始めの頃は、お互い顔を赤くしながら手をつなぐとか、キスとか、色々、「してもいいか?」と尋ねあっていた。
 毎度毎度互いに断ることは少なくて、でも毎度毎度確認しあって、毎度毎度顔を火照らせていた。
 ずいぶんとまあ、初々しかったものだ。
 自分がそうだったとは今思い出すと恥ずかしい限りだ。
 相手もそうだったからいいけれど。

「どこ……。そうだな、どこにしようか」

 ふむ。と今度は考える素振りを見せるデュークはオレを見る。
 どこにするかを考えているのだろうか。
 じっと顔を見つめられたと思ったら、視線は足元まで下がって、また顔まで戻ってくる。

「……、どこがいい?」
「なんだよそれ」

 呆れ半分に言った。
 もう半分は、恥ずかしながら照れ隠し。
 向こうから強請ってきたはずのキスを、どこそこにして欲しいと言うだなんてまるで自分が誘っているようではないか。
 別に、自分から誘いを掛けることは勿論あるけれど、それでもなんだか今は恥ずかしい。

「アンタがしたいとこにすりゃいいじゃん」

 言いながら、なんだかむずむずする妙な感覚。
 じっとしていられない、変な感じ。
 てか、今のこそ、誘っているような台詞じゃなかっただろうかと言い換えられない自分の台詞に後悔する。

「うむ……そう、だな……」

 言いながら、口元に手を添えるデュークは何を考えているのか。
 無意識なのか唇を撫でる指がエロい。
 妙にドキドキする。

「……、しないのかよ」

 変な沈黙に耐え切れずに言えば、デュークは困ったように眉を寄せた。

「いや、……」
「……」
「……」
「……」

 そのまま二人で固まる。
 デジャヴを感じるのは気のせいか。気のせいだ。
 沈黙が長引くごとになんだか顔に熱が集まるのを感じる。

「……その、」
「なに?」

 ようやく口を開いたデュークを頼りに先を促すと、デュークは顔半分を手で覆って言った。

「なにか、恥ずかしいな」
「……」

 再び沈黙。
 お互いの手とか目とかが所在無さげに泳ぐ。
 今度この沈黙を破らないといけないのは自分だろうに、状況を変えなければいけないのに、わかっているのに、口から出たのは更に沈黙を助長させる言葉だった。

「そ……、だな……」

 その日から数日数週間はなんだかぎくしゃくとしていたけれど、なにかは深まった気がした。