**なかよく
「……お邪魔だったかしら?」
「なにがなんでそうなるのよ」
さて、随分荷物が減ったから食材やらなにやら買い出しに行こうと先ほど決まった。
順番の決まっている今回の買い出し当番はリタだ。「流石に今回は荷物が多いから。人数いた方がいいだろ」
それじゃあ行ってくると、ガルドを手に外へ向かおうとしたリタに、ユーリがそう言って付いてくることになった。
確かにメモにはいろいろと重そうなものも書き出されている。「じゃあ、私も付いていこうかしら。個人的に欲しいものもあるし」
ジュディスもせっかくだからと話にのってきて三人で行くことになったのだ。
人数が増えた分、荷物持ちが楽になると思ったが、同時になぜか胸の辺りがもやっとした。
「なにか睨まれてる気がして、ね」
「自意識過剰なんじゃない?荷物持ちが増えてあたしはラッキーだわよ」
「そう?ならいいけど……ああ、そう言えば、ちょっといいかしら?」
「うん?」ジュディスが振り向き、二人の後ろを歩いていたユーリに並んだ。
「この間の話なんだけど……」
「ああ、あれか?」楽しげに言葉を交わす二人の様子を見てなんとなくリタもユーリの隣へ並び話を聞く。
「あれはどうも地域限定みたいなの。聞いた話によるとこの近くらしいから有るかもしれないわ」
「へぇ。そいつは楽しみだ」
「……なんの話?」気になり聞いてみたらどうも食べ物の話のようだ。
「ふーん」
「まぁ、リタは限定品とか興味無さそうだな」
「不味くなければなんでもいいわよ」
「それはまぁごもっとも」はははと笑うユーリを窺っていたら視線を感じて、リタは少し視線をずらした。
「……なによ」
「いいえ。ただ、微笑ましいわね、と思っただけよ」
「ん、なにが?」ユーリの首がくいっと右隣のジュディスに向けられた。
「あなたたち、兄妹みたいで……見ていてなんだか微笑ましいの」
「羨ましいの間違いじゃないか?」
「ふふっ、似て非に非ず。って感じかしら」
「なんだそりゃ」兄妹とはなによ、こんな素行も態度も悪い兄貴要らないわっと口から出る前に形のないナニカに口を塞がれてしまい声がでなかった。
酷く居心地が悪い。「……理解不能だわ」
なにがってさっきからイライラしている自分がだ。
おかげでいつものようなテンポが掴めない。「リタ、調子悪いのか?」
「はっ!?な、なんでそうなるのよ」突然掛けられた声にドキリと心臓が跳ねた。
「いつも以上に静かだからな」
「別に、あんたには関係ないでしょ」
「照れているの?」
「なんでそうなんのよっ!!!!」
「……リタ?」ぱちくりと瞬かれ、はっとした。
「ご、ごめん……なんでもない」
ジュディスのいつもの軽口に、なんでだかいつも以上にカッとなってしまい恥じた。
なにやってるの、あたし……。
原因がわからない。「お前、ほんとにだいじょぶか?」
「……平気よ」
「具合が悪いなら休んでてもいいのよ?」
「平気だってばっ」肩をすくめた二人にまたじくりと苛立つ。
なんだか見ていられなくて視線を落とした。
ふと視界にユーリの腕についた魔導器が映り、そっと手を置いた。
ひんやりとしていて気持ちがいい。
自分も魔導器になれたらいいのに。
そうすればこんな意味のわからない苛立ちに苦労することもないだろう。
ぼんやりと思ったら魔導器が不自然に動いた。「どうせなら手ぇ繋いでやるよ」
「えっ!!」何事か理解する前に大きな手が己の手を掴んだ。
「なぁっ、なにすんのよ!!離しなさいよっ!!」
「途中倒れられても困るからな」
「あら、じゃあ私もご一緒しようかしら」
「……ジュディは平気だろ」
「つれないわね」
「まっ、エスコートくらいはしてやんよ。下町流で悪いがな」
「こういうのは気持ちが大事なのよ」
「違いねぇ」すっとユーリの右手にジュディスの手が置かれた。
「はっはっはっ。両手に花ってか」
気分いいねぇと軽口を言うユーリはまったくいつもと変わりないし、
「たまにはこういうのもいいわね」
楽しさを追求するジュディスなんていつも以上に楽しそうで、
「離してってばっ!!なんなのよ……もうっ!!」
一人このわけのわからない、一列に並んで手を繋いでいるという状況に動揺する自分が、逆におかしく思えて抵抗をやめた。
「ちゃっちゃと済ませるわよ!!」
代わりにぎゅっと手を握り返して先を促した。
「いてっ!痛いってリタっ!!」
「うるさいっ!!!!」
「こらこら引っ張るなっ。あと、もちっと手加減を……ってジュディいてぇっ!悪ノリすんなよっ」
「あらごめんなさい」ぎゃいぎゃいと、店に着くまでこの騒がしいやり取りは続いた。