**その今度は明日でいいのかな?
「忙しそうだな」
「そっちもね」時間はもう深夜を通り越して明け方近い。
フレンは暫く空けていた自室で、増えに増えた書類を片付けていた。
騎士団長代理の任を承けてから、徐々に処理しなければならない書類が増えていっている。「ちゃんと寝てるのか?」
窓から当然のようにやって来て、当然のように窓枠に腰を掛けるユーリ。
噂では、所属している凛々の明星はここのところ毎日てんてこ舞いの忙しさだと聞く。
今回は帝都で仕事があったのだろうか。「君と同じくらいは寝れてるんじゃいかな?」
「寝てないのか?」
「ユーリこそ」筆を置いて歩み寄り、隣に腰を掛ける。
手を伸ばして、サラサラと風に遊ばれる黒髪に指を差し込むとするりと抜け落ちた。「……珍しいな」
「うん?」
「それとも、ここも出入口だってやっと認めたのか?」ああ、と気付いたがそんなこと認めるはずが無い。
「ただ、君が非常識な時間に来るものだからそっちに気を取られただけだよ。今度はちゃんと正面から来てね」
「気が向いたらな」いつもよりもアッサリと味気の無い会話。
やはりユーリも疲れているのだろう。「どうしたの?」
「ん、いや……まぁ、別に」こんな時間に、こんなところへ、疲れているのに、なにかあったのか。
色々な意味を込めていったら、曖昧に言葉を濁し、顔を逸らされた。「……ユーリ?」
くんっと、軽く毛先を引っ張ったが顔は向こうを向いたままだ。
「ただ……あれだ」
独り言の様に紡がれる言葉に聞き耳を立てる。
やはり、ユーリは酷く疲れているようだ。「顔、見たくなっただけ」
何故なら、普段の彼なら絶対に言わない事を口にしたから。
「じゃあ、こっちを向いてよ」
「嫌だね」ふんと鼻を鳴らしたユーリはすっと立ち上がった。
「ユーリ?」
「また今度にする」お前ももう寝ろよ、なんて台詞が聞こえた時にはもう部屋にはフレン一人だけだった。
「……また今度、ね」
ポツリと口の中で繰り返すと、フレンは腰を上げた。
そのままベッドにもぐり込んで間もなく、意識を手放した。