もだもだ無自覚ユーリさん

 

 

**呼び名

 

 いつものように偶然出会って、いつものように道行がてらに少しだけ話をした最後の別れ道。

「じゃ、またな、デューク」

 軽く手をあげて別れを告げると、いつものように顔が近づいてきて額に触れた。

「またな……ユーリ」

 至近距離で囁くように低い声が響く。
 この感覚にもだいぶ慣れたと思っていたが、続いてその口から名前を呼ばれたことに酷く動揺した。

「なっ……いま……ぇ、は?なに?」
「……違ったか?」
「いっ、いや、名前はあってるけど……」

 呼ばれたのなんか、初めてかもしれない。
 普段から呼ばれているありきたりな名前は、いつもと違う響きに聞こえて驚いた。

「な、んでいきなり……」
「いけないか?」

 小首を傾げたデュークに向かって意味もなく何度も首を振った。

「いっいや、いやいや、いや?」
「どっちだ」

 嘆息を漏らすデュークには悪いがこっちだって色々とついていけてない。

「悪かねぇけど、なんだ……その、あれだ」
「どれだ」
「なんか、変」
「なにが?」
「変なもんは変なんだよ」
「ユー」
「うわっ!言うな馬鹿っ!!」
「悪くないと言ったのはお前だぞ」

 短いような、長いようなやり取りは続き、やっと結論を出した頃には、暴れだすナニか大きなもの(例えばギガントモンスターレベル)を一人で無理矢理捩じ伏せるぐらい疲れた気がしてた。