たぶん付き合ってる二人
「無性に、」の続きなような そうでないような……
**あいたくなって
「どうした?」
デュークがユーリの髪を梳く。
ユーリは黙ったままそれを甘受している。
――常ならほぼ有り得ないことだ。(悲しいことに)
大抵「くすぐったいからやめろ」だの、「痛いからやめろ」だの、とにかく「やめろ」と一言必ず言う。
それが、今は顔だけやたらむくれっ面をしているだけで全くの無反応。
それだけではない。
今日は会った時から変だった。
事もあろうに、顔を合わせて挨拶するより先に、ユーリ自ら、腰に腕を回し、首筋に顔を埋め、擦り寄ってきたのだ。
――常ならばまず有り得ないことだ。(残念なことに)
普段のユーリならば、こちらから接触を試みない限り手さえ繋ごうとしない。(思い付きもしないらしい)
更に言えば、今日はまだ会ってから一言もユーリは喋っていない。
――常ならば絶対に有り得ないことだ。(これは本当に心配だ)
顔を合わせれば一言必ず掛けてくる日頃とは違い、唇を固く結んでされるがままに身を任せている。「なにかあったのか?」
「……」問い掛けても黙り込んだまま。
時折顔を、犬か何かのように擦り付けてくる姿がやたら可愛く見えるが、今は愛でる心の余裕などなく、常ならば決して見せぬであろうユーリのその様子にデュークは心配の二文字を募らせていた。「ユーリ」
髪を弄るのを止め、俯きがちな顔に合わせて口付ける。
顔中の至る所に、あやすように優しく唇を落とす。
――よく見ると、目元がうっすらと色付いている。
痛々しい目尻に労るよう触れた。「……泣いてるのか?」
「ねぇよ」いつもと変わりない声色なのにも関わらず、幾分か弱々しく聞こえたのは否定する言葉に勢いがなかったからだろう。
「どうかしたのか?」
「別に」ようやく会話らしい会話ができているものの、ユーリの言葉には覇気がなく、またもらしくなくぽすりと肩に顔を埋めた。
「ユーリ?」
「……アンタ、上手いな」年の功かなと肩口で言われ、掛かる吐息にこそばゆさが首筋を走る。
「なんの話だ」
「こっちの話」あーあ。
と、溜め息混じりの声を上げてユーリは離れた。
薄れる体温が少しもの寂しい。「……サンキュ」
「私は何もしていないが?」
「いいんだよ。アンタがここにいるだけで」何気無く紡がれたその台詞に胸がざわついた気がしたが、わざわざ口にする必要も無いだろうと思い、デュークはそうかと一言だけ返した。