付き合ってる二人
現代パラレル
**ご用件は?
《今、時間はあるか?》
ふと携帯を覗くと、十分前に届いていたメールがあった。
差出人はデューク。
急いで返信を送った。
《ある》
些か急ぎすぎた気もするが、相手は忙しい社会人。
時間は大丈夫かと逆に心配しながら早くも待つこと二分、着信が鳴った。
《電話しても?》
本文じゃなくて、件名に用件が書いてあるメールの返信を打つ代わりに電話した。
「すまない」
「どうかしたのか?」
ほぼ同時に言葉を発していて、二人して笑った。
「時間は平気なのか?」
先に笑いを止め、オレが言えばデュークの声が電話越しに響いた。
「ああ、少し時間ができた。お前は?」
「暇してたところ」
「そうか」
ほっとしたような声色に、何故か嬉しいに似たような思いを抱く。
数日前には直接聞いていたのに恋しくて仕方ない、だなんてまるで女のように想いを馳せる。
我ながらバカのようだ。
「ユーリ」
「ん?」
聞いていて胸に染みるような、心地好い声質に耳を傾ける。
「なんだよ」
先を促した言葉が心なしか弾んでしまったのはバレてはいないだろうかだなんて小さな羞恥心は、数秒もしないうちに掻き消えた。
「……キスしてくれ」
電話越しに吐かれたまさかの台詞は、直接鼓膜を震わせたかのよう耳に響いて思わず身体がピクリと跳ねた。
「ぇーっ、と?」
「早く」
「ぇ、今?」
「今」
電話越しに何を、と戸惑ってる間にもデュークは急かす。
「今って、今?」
「それ以外の今とはなんだ」
「だって、電話、じゃん」
本人が目の前にいてもそりゃ難しい要求だけど、居なけりゃ居ないでそれ以前の問題だと思いつつ言えば、デュークはそうかと一言呟いた。
「なら手本してやる」
「は?」
「右頬、」
「右?」
――チュッ。
耳元でリップ音が響いた。
「なっ!」
「次、鼻」
「まっ」
チュッ。
また音が鳴った。
ぞくりと身体が何故か疼く。
「耳、」
チュッ。
「っ……ストップ!」
小さく声が漏れそうになったのを堪え声を張り上げると、小さく笑われた気がした。
「ユーリ」
名を呼ばれて思わず赤面した。
「お前の番だ」
相手の顔なんか見えやしないのにどうもデュークが緩やかに口端を上げこちらを静かに見つめている像が脳裏にちらつく。
「……わからなかったなら、もう一度しようか」
「いい!もういいからっ!」
全力で答えると「なら」とデュークが先を促した。
「早くしろ。しないなら次会ったとき……覚えていろ」
「しないなんて言ってないっ」
一段と低くなった最後の一言にもやはり全力で答えてしまった。
「ならいい」
満足気に言うデュークに知られぬよう小さく息を吐いて深呼吸。
仕方なく唇を尖らせた。
ここには居ない、奴を勝手に思い浮かべる脳が憎い。
あの赤い目でじっとこちらを見ているデュークが浮かぶ。
涼しい顔して、キスを待つヤな顔。
心拍数が上がった気がする。
一息飲み込み、覚悟を決めた。
脳裏に浮かべるあの白い肌を思い、軽く、吸い上げるように、音を立てた。
――チュッ。
…………自分でやってるときの方が数倍恥ずかしい。
辺りに誰も居ないのが幸いだがどうも恥ずかしい。
なにか耐えきれなくなって、オレは火照る顔を覆い、息を吐き出した。
「もっと」
「――ぇえ?」
「もっとしてくれ」
大のオトナが甘えせがんでくることを承諾するのには、時間は掛からなかった。
「――っわかったよ」
一度も二度も変わらない。
望むように、幾度も音を立てた。
見えない相手はクスクスと耳元で笑う。
「くすぐったい」
「んっ、オレ、も」
ちゅっ。
言葉の合間にもキスを挟む。
「今日は積極的だな」
「デュークが、してくれって」
「ああ、そうだったな」
ちゅっ。
「ユーリ、」
「んっ、」
「会いたい」
「オレ、も」
いつの間にか熱くなっていた息を吐いてキスを止めた。
「夜は?」
「バイト」
「朝」
「午前中」
「行くから」
「ん」
待ってる、の代わりにキスを一つやった。
応えは同じく違う、優しいキスだった。
「その熱は私に解かせてくれ」
「……ばっかじゃねーの」
「薄かったら怒るからな」
「ばか」
「ではな」
ちゅっ。
最後にまた音を立てて、通話画面が切り替わった。
「……ばっかじゃねーの?」
誰ともなしに、そう呟いた。
コネタでは1〜5に分かれてましたが繋げました