降黒 で付き合ってる二人の話
WCの後の話(つまり未来捏造ってかんじ)
ほんのり赤→黒風味で赤司君の性格がちょっとギャグに走ってる
**束の間の幸せに浸る
何故、君なのだろうか。
非常に不可解極まりない。
何故なら彼の近くには誰もが美女と謳い、誰もが認めるほど彼を慕う存在だっている。
それでなくとも、彼の気質や性格なら多くの女性に好かれるものだろう。
まぁ、普通の人はまず彼の存在に気付けないけれどね。まったく、世の女性は人生を無駄に過ごしているよ。
彼の存在に気付いても彼の良さがわからない愚か者もいるし、わかっても二度として告白に相応しいタイミングで会えないかだけど。
中学の時だって、彼と同じ図書委員だった女の子と一年のとき彼の隣に座っていた女の子は彼に告白しようとしたけれど、彼が見つけられずにその恋を諦めたということだってあったくらいだ。
女性が苦手なわけでもないし寧ろ、僕たちの中では一番と言ってもいいくらい女性に対して紳士的な彼のことだ、高校でも密かに想われている事だろう。
それなのに。
それなのに、何故、君なのだろうか。
君は男で、彼とは同性。
その上君ときたらどれをとっても平凡、平均、どこにでもいるような存在だ。いやそれ以下だ。
たまたま部活が一緒で、たまたま委員会が一緒だっただけだろう?
それなのに、何故、君なのだろうか。
例えば比べるとして、僕の方が圧倒的に優れている。
一つ断っておくが、僕は同性である彼との交際を望んでいるわけじゃない。
あくまでも例えばの話だ。
例えばの話、僕と君を比べたらの話だ。
間違っても君と同類だなんて思わないでくれ。気持ち悪い。
それで、例えばの話だが頭脳でも運動能力でもどんな科目種目能力値を比べても圧倒的に僕が優れているだろう。
自分で言うのもなんだが顔だって悪くないしなにより、僕の方が彼を理解している。
僕の方が彼の美点を知っている。
僕の方が彼の望みを叶えてあげられる。
それなのに、何故君なのだろうか。
だいたい普段君は彼の姿を捕らえることができないだろう。
それをなんだって?
オレは見つけてみせる。何度見失っても、見つけて、こうして、お前はここにいるんだって証明してみせる、……だったか?
そんなできもしないことを軽々しく口にしないでもらいたい。不愉快だ。もちろん僕には可能だが、だからこそ不愉快だ。
それより、こうしてってどういうことだい?え?まさか手をつないだの?え?抱いたのかい?え?どうなんだい?
発言する事を許可する。抱いたのかどうなのかはっきりしろ。
……………………、へえ、そう。
別に、仮に。仮に彼が抵抗することなくそれを受け入れていたという事実がもし仮にあったとしても、それはまあいいだろう、昔の黄瀬に比べれば許容範囲だ。だが君は許さない。
君は許さない。絶対にだ。
時間がないから、これで失礼するよ。
最後に言っておくが、僕が君の番号を知っているのは彼に聞いたからじゃないし、君が彼に言ったことも彼から直接聞いた訳じゃない。
君がどう思おうが関係ないが、罪のない彼に理不尽な事だけは言わないように。
あと、中学時代の話をしたが、彼を想っていた子のことは一言も言わないように。彼はそんな事実知らない。知らなくていいことだ。
それから、……僕は彼にも怒っているんだ。
彼に近々会いに行くと伝えてくれ。
まぁ、さっき僕からも伝えたけれど、一応ね。
それじゃ、また会おう。
ブツ。
ツーツーツー。
通話が切れて、呆然と立ち尽くす少年の手元で、再び着信音が鳴る。
びくりと大袈裟に跳ねた少年は、恐る恐る携帯の ディスプレイを見た。
そして、表示された相手の名前にほっと息を吐き、それと同時に出そうになった涙をとっさに上を向いて回避。
深く息を吸って、吐いて。
少年は通話ボタンを押した。
「ごめん、出るの遅くなった」
「いえ、こんな時間にこちらこそすみません。今大丈夫ですか?」
「うん」
受話器越しに聞こえてくる声に、なんだか安心する。
ついさっきの非通知は、なにか悪い夢だったんじゃないか。
そんなことをぼんやり思う暇を、つい先日から付き合い始めることになった恋人は無情にもくれなかった。
「あの、まさかとは思いますが、さっきまで赤司君と話してましたか?」
「……」
「降旗君?」
「……くろこ……」
赤司君。
受話器越しの黒子がその名を出した途端、緊張の糸が切れてしまったのか何なのか、折角出さずじまいだった涙が滲んできた。
声なんか情けないことに震えてる。
「なに、あいつ……なんなのあいつ」
いきなり非通知で電話が鳴ったのを見て、暫く様子を見ていたけれど、何度も何度も延々と五分も鳴り続けたそれに仕方なく出た途端に
「次は3コール以内に出ろ。出なければ殺す。今から僕が許可するまで喋るな。喋れば殺す。勝手に電話を切るな。切ったら殺す。風の噂で君とテツヤが付き合う事を聞いたが、君は正気か。君の特殊嗜好に彼を付き合わせるな。早々に別れろ」
と、超高圧的に言われてから延々と黒子に自分は相応しくない。
黒子をホモにするなと繰り返していた。
最後の方はなんだかちょっと違った気もするが、前半のインパクトが強すぎる。
「どうせいつかはお前も彼も雄の本能に従って女を取るだろう。まあお前が真性の同性愛者なら違うかもしれないが、どちらにせよ今の感情は友情の延長であり恋情なんかじゃない」
「お前の勘違いに彼を巻き込むな」
「彼は優しいから、君の恋人ごっこに付き合っているだけだ」
不安になったのは言うまでもない。
つらつらと、何度も自分の思いを否定されて、自分と黒子の関係を否定されて、何度もそれを否定しようとしたけれど、一番最初に言われた言葉の鋭さと電話越しでも伝わってくるあの威圧感に気圧されなにも言えなかった。
そして、その間にも黒子が自分と同じような感情を同性に持つわけがない今すぐ別かれた方がお互いのためだと言われて、一瞬でもそうかもしれないだなんて思ってしまった。
それがなによりも悔しい。
「なんなんだよあいつ……」
「なにか言われましたか?随分長く話してましたけど」
「え、どのくらい?」
「ボクと赤司君の通話が終わって直ぐ君と赤司君に電話しても繋がらなかったので、恐らく十五分くらいでしょうか」
とすると、最初のコールを差し引いて赤司は十分くらいずっと喋り続けていたということか。
それはそれで恐ろしい。
「ちょっと妬けちゃいますね」
「ぇ、……え?」
いきなり自分はなにを聞き間違っているんだと、黒子のセリフに疑問を持ったが、どうやら聞き間違いではないらしい。
「ボクだって、まだそんなに電話したことないのにちょっと悔しいです」
「えっ、え、なに?」
「君はそう思いませんか?」
「え、えっと、」
「降旗君、ちょっとお話しませんか」
「する!」
黒子の提案に、大きくはっきりまるで元気のいい小学生のような答えを返した降旗は恥ずかしさで赤くなった。
受話器越しにくすくすと黒子の笑い声まで聞こえるものだから余計赤くなる。
「いつも、メールで済ませちゃいますもんね」
「ぁ、うん、お互い練習で疲れてるし……なんか掛けにくいんだよな」
「そうですね。降旗君結構寝るの早そうですし」
「黒子の方が早いだろ?」
「そうでしょうか?平均するとだいたい十二時くらいですけど」
「あれ、思ってたより遅い?なにしてんだよそんな時間まで」
「大抵本を読んでます」
「あー、それなら納得。でもそれだと逆に随分サバ読んでね?」
「……そうでもないですよ」
「その間怪しいって」
「降旗君はどうなんですか?」
「あーうん、オレも十二時くらいかな?前はルールブックとか読んでたけど、今はゲームしたりチャットしたりかな?」
「じゃあ、掛けても良いですか」
「え?」
「電話。今度から、掛けてもいいですか?」
「え!うんっ!もちろ、あっ、やっぱだめ!オレが掛ける、オレが掛けてもいい?だいたい今くらいの時間でさ。いいかな?」
「はい。待ってます」
「うん、夜更かししない程度にしような」
「そうですね。で、降旗君」
「ん?」
「赤司君とは何を話してたんですか?」
「え、あぁ……あー、うん……」
黒子の落ち着いた声と調子と、思わぬ嬉しい約束事にぽんっと頭からついさっきまでの鬱々とした気持ちが消えていた。
やっぱ黒子ってすごい。
密かにそう思いながら、降旗は下手に隠すより正直に話そうと口を開いた。
「その、なんていうか。……要約すると、別れろって言われた」
お互い、付き合い始めてから暗黙の了解で秘密にしてきた仲。
自分から誰かに黒子との仲を言ってしまったわけではないが、そう取られてしまいそうな状況だ。
オレは誰にも言ってない。
それを強く主張しよう。
降旗がそう、自分の主張を固め黒子の反応を待っていると電話越しにふぅと息が吐かれた。
「やっぱりそうでしたか。……変わってませんね」
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