現代パラレル
花屋と青年
 「バイト、始めます」と同じ設定


**バイト、始めました




 世の中間違っている。
 いや、物価の高騰が原因なのだろうか。
 ともかくオレは世の不条理を知った。

「……間違ってる」

 2980円。
 298円じゃない、2980円だ。
 軽く一週間分の食事+ちょっとした軽食にあてられるその額は、花咲くたったの一鉢の値段だ。
 しかも、コレは、コレで、オレの知らない世間様では安いと言うらしい。

「……間違ってる」

 2980円なんて大金を花に費やしてどうするのやら。
 そんなものを買う馬鹿がいるのか。
 いるんだなこれが。
 バイト初日、その事実に愕然としたものだ。

「間違っていようが、お前が買うわけではなかろう」

 ふと隣で作業していた店主が口を開いた。
 独り言が聞こえたらしい。

「オレとしてはこんなものに金払う余裕があるなら恵んでくれと言いたいんでね」
「こんなものとは聞き捨てならんな」
「そりゃ悪かった」

 言いながらオレはオレで作業を続ける。
 馬鹿馬鹿しい値段と、花の名前を小さな紙に書いていく。

「物を得るには代償が必要だ。この世界では代償を金銭で賄っている。それだけだろう」
「だから、花と食い物の値段で差がないのが許せねぇんだって」
「いっそ食い物屋にでもするか」
「そうじゃねぇだろ」

 ボケる店主に突っ込むと、店主はふっと小さく笑った。
 それこそ5000円の価値があるんじゃないかと思いながら、珍しく動いた表情筋ではなく花の値段を紙に書いた。



もしかしたら、これが切っ掛け