頭の中身が可哀想な中学生と純粋な子供
「十年くらい前から」の過去話
夢が大きいのは良いことです
おけですか?
**十年くらい前の話
「にーちゃん、なにしてるんだ?」
「勉強だ」
「ふーん……」
きょろきょろと、くりくりとした愛らしい瞳で机と、私を交互に見るユーリ。
身長の関係でユーリには机の上の物は見えないだろうが、私が机に向かっているから机を見ては私を見上げている。
最近また一層可愛くなって私は勿論の事、養父のエルシフルもその娘で私の義姉に当たるクロームも、近所住まいのこの子の行く末を案じている日々だ。
「……あそばねぇーの?」
「お前の為だ」
唯一救いなのは私とユーリが両思いな事だ。
これから先、この思いが互いに途切れること無ければ夢のゴールインも夢ではない。
今のところ現実だし、まず間違いなく実現するだろう。
むしろさせてみせる。
しかしこの世はまだ同性間の愛やそういった事に対しての偏見が強い。
ユーリをそんな風当たりのキツイ世に出すのは心苦しい。
何事も早急に対処すべきだ。
総理にでも大統領にでもなって法を変える手段も、金を積んで他国で籍を用意するのも、今からの下積みがきっと重要だ。
「私はユーリが好きだ。ユーリも私が好きだろう?」
「うん」
「だからもう少し待ってくれ」
頭を撫でてやりながら、キスの一つでもしてやりたい欲求を押さえつける。
キスも×××も、もう少し大人になってからと決めている。
お互い高校を卒業するまでは待った方が良いだろう。
身体にかなりの負担が掛かるらしいから仕方ない。
キスはそんなことないだろうが、自制が効かなくなっては困る。
心の弱い私を許して欲しい。
「すこしってどれくらいだ?いつになったらあそべんの?」
ほんとうに、心の弱い私を許して欲しい。
だがしかしこれは未来のため。
思わずぐらついた己を叱咤した。
「ユーリ、今は遊べない」
ここは鬼になろう。
「私は勉強してるから、また今度な」
小さい頭をまた撫でてやり、机に向かったが、途端。
――ごんっ。
と、机が揺れた。
「む?」
「こいつたおせば、あそべる?」
――ごんっ。
また机が揺れた。
見ればユーリが頭突いている。
大きく仰け反って、勢いよく、
「ユーリっ」
頭が当たる前に当然止めた。
「にーちゃん、」
「大丈夫か?痛かっただろう……」
手を外して見れば、赤く腫れていた。
あの痛々しい音といい、どれ程強くぶつけたのやら。
「待っていろ、今湿布、を……?」
立ち上がり、湿布を求めて部屋から出ていこうとしたら裾が引かれた。
「……ユーリ?」
どうしたのかと下を見れば、期待に満ちた、輝く瞳が私を見上げていた。
「なにしてあそぶ?」
「……」
心の弱い私を許して欲しい。
思わずその小さな体を抱き締めた。
キスくらい、ユーリが小学生になったら解禁でいいだろうかと人生設計を立て直したのは言うまでもない。
「ところでユーリ、どうして私の部屋に?」
「エルがこっちににーちゃんいるって」
「そうか。……どうしても邪魔をしたいのかあの人は……」
「じゃま?」
「いや、なんでもない」
その約数ヶ月後、ユーリからの衝撃的な発言によってその計画全てが崩れたがそれはまた別の話。