エイプリルフールネタ

 

**嘘と真とわからないモノ

 

「今日は嘘を吐いてもいい日らしい」
「はあ?」

 唐突にデュークが言った。

「それがどうした」

 それはつまり、物凄くどうでもいい日じゃないか。
 嘘という嘘を日常茶飯に重ねているユーリはそう思った。

「嘘偽りの言葉の中に真実を含めたら、どう思う?」
「あー……?」

 また意味のわからないことを……と、ユーリは頭を抱える。

「つまり、なんだ」
「例えば、だ」

 例え話しかよ。
 そう思ったのは隠すことにした。
 そのまま無言で先を促すと、デュークはその端麗な顔をユーリに無造作に近付けた。

「私は、お前のその顔が嫌いだ」
「はあ?」

 また唐突だ。
 思わず顔をしかめるユーリの眉間に目と鼻の先にいるデュークは人差し指を当てた。
 剣を扱っている割りに武骨さがあまり感じられない美しい指がそのままぐりぐりと眉間を押す。

「感情の起伏をなかなか見せないそれは少し不快だ。見せたとしても、お前はどうも私の想像を越える反応をする」
「そうかぁ?」

 つーか、そりゃオレの台詞だと言うユーリは眉間を弄る指を退かした。

「はたから見たら、お前だって現在進行形でなに考えてんのかわかんねぇ能面ヅラしてんよ」
「私は元々こういう顔だ」
「オレだってそうだ」
「……それに」

 あ、無視しやがったコイツと思った刹那、ふいに唇が軽く触れ合った。
 今までにも幾度となく交わされた、一般的に接吻と呼ばれる行為は普通他人の同性同士が行うものではないが、あまりの頻度に最近では拒否も注意も面倒になってしまった。
 確かに、止めて欲しいとは思うがそんなに気にするほどの事ではない。
 ただ体の一部が触れ合うだけだと、犬猫に舐められているようなものだと最近はそう思うことにした。
 でなきゃ疲れて仕方ない。主に精神的に。
 おとなしく唇を押し付けられているユーリから少し顔を離すと、デュークが唸った。

「どうも落ち着かなくさせる」
「はあ?」
「やはり嫌いだな」

 ため息を吐くデューク。
 意味がわからん。
 というか、

「なにが嘘でなにが本当だったんだ?」

 事の始まりを思い返せば確か、嘘の中に真実があったらどうとか言う話だ。
 つまりは、さっきまでの会話の中に嘘と本当があるんだろう。

「先に答えることがあるだろう。お前はどう思った」

 距離が少しはなれ、普通に対話する位置に移動する。

「意味わかんねぇ」

 躊躇いもなく正直に言うと、嘆息が聞こえた。

「そうか……」

 わかった、と小さくデュークが言い少し俯いた。

「デューク?」
「わからないな」

 声を掛けると間を開けずに、独り言のようにデュークは呟いた。

「ふっ……。嘘とは難しいものだな……。口を閉ざすことは容易だが、言葉にするのは難しい」

 いや、ほんとに意味わかんねぇから。
 なぜか自嘲するかのように笑うデュークに、ユーリは無性に助けを乞うため天を仰ぎたくなった。

 

 

 

 

 

 

数日後