Please give the「Manual」to…
「いい加減にしろ」
ユーリは怒っていた。
これ以上無いほどに、ただひたすらに怒っていた。
それでも声を低めて、腹の底から湧く怒りをできる限り鎮めていた。
「何度も言ってるだろ」
何度も何度も、今日この日この時会ってからも、その前からも。
言っても理解しない阿呆の胸ぐらを掴み、ユーリは詰め寄った。
「アンタ、聞いてなかったのか」
黙り込んだままの男に、ユーリは声を更に低める。
「……ふざけんなよ」
「…………」
「なんとか言えよ、デューク」
名を呼ばれて、男、デュークは言葉を詰まらせながら弁解した。
「その、……だから……、そういう意味だとは、思っていなかった」
正直、今も疑っている。
それは口にしなかったが、顔に出ていたのかもしれない。
どちらにせよ、更にユーリの目を吊り上げさせる発言だったことには変わりないだろう。
「ああ゛ん?んだテメェ、それ以外にどんな意味があんだ?冗談とか?っざけんなよ。んな冗談、冗談でも言わねぇよ」
ユーリの眉間に皺が増える一方で、やはりユーリの言い分は何かの間違いではないかとデュークは疑いを深める。
何故なら、
「好きだ。付き合ってくれ。アンタが欲しい。……普通、男相手にこんなこと冗談でも言うか?あ゛?」
正しくその通りで頷きたくもなるのだが、そうさせてくれないのはユーリ本人である。
仮にも好意を寄せているらしい相手の胸ぐらを掴み上げているのだ。
オプションとして油断すれば気圧されそうになる怒気と、チンピラ紛いの台詞回し。
物理的にも心情的にも頷けない。
――やはりなにかの聞き間違い勘違い、そもそもの青年の言い違いなのではないだろうか。
「聞いてんのかゴルァっ!」
記憶にある青年と、目の前にいるチンピラのような青年とがどうも合致しない上、顔を合わせると度々向けられる好意とは言い難いものに、どうすればいいのかデュークは人知れず途方に暮れていた。