確実にED後話

そしてver.フレンよりも確実に後の話

**クリームスパゲッティ
  ver.デューク

 

 それは本当に偶然だった。
 なにをするわけでもなく暇を持て余し、一人でぶらぶらと歩いていたユーリと、大量の食材を抱えて颯爽と歩くデュークが出会ったことも、その時間帯が昼時だったことも、偶然だった。

「丁度いい。デューク、一緒に昼食おうぜ」

 積もる話が有るわけではないがなんとなく近況でも聞きたくて、断られること前提にユーリは申し出た。

「そうだな……いいだろう」

 しかし、返ってきたのは承諾を表す返事で思わず聞き返してしまった。

「え、いいのか?」
「それは此方の台詞だと思ったのだが……?」
「いや、いいんだけどさ」

 改めて思えば相当失礼だが、あまり人と交わらない、人間嫌いなイメージがあった……というか事実そうだから始祖の隷長と行動を共にしたり、人間を犠牲に世界を救おうだとか考えていたのであろう奴が、まさかこんな人里で他人と食事を供にする等と言う提案に頷くとは思わなかった。

「お前はそういうの嫌だと思ったからさ」
「丁度空腹を感じていたし、お前となら構わない」
「そら良かった」

 顔見知りが居ればいいらしい。
 まぁ確かに知らない所や苦手な場所に一人で行くより「一応知り合い」とでも、誰かと一緒の方が気は楽だろう。
 そう結論付けたユーリはそれじゃあとデュークを促し近くの飲食店へ直行した。

「…………………………」
「……二人、な」
「……あっ、はいっ!!!!!」

 なかなか決まり文句が店員から出ず、こちらから答えれば妙に声を張り上げて席へと案内される。
 刹那ざわりと店内がざわめき立ち、ユーリは何事かと思ったが、すぐに半歩後ろの存在に気付いた。

「そっか、お前も顔いいもんな」
「なんの話だ」

 ふと幼馴染みの事を思い出す。
 彼もその顔立ち(だけでなく性格もだったが)で道行く女性の人気と視線を集めていた。
 今行動を共にしているデュークも人目を惹き付ける容姿だ。
 白く長い、癖のある髪に、整った顔立ちは一瞬女性と見間違えてしまいそうなぐらいだ。己でさえ間違われることがあるのだ。この顔立ちじゃあその比じゃないだろうと思うと可哀想だ。
 背も自分とそんなに変わらず高い方だから目立つことこの上無い。

「お前も大変だな」
「だから、なんの話だ」

 きっと人間嫌いになった理由はこの視線も少なからず影響しているのだろうと、自分もその視線の対象だと気付かぬユーリは心の中でデュークにエールを送る。

「……なぜだ。先程から物凄く不本意なことを思われている気がしてならない」
「気のせいじゃないか?」
「ここここちらへどうぞ!!!!」
「サンキュ」

 案内された席に座りメニューを広げる。
 どれにしようかと悩んでいると、突っ立ったまま此方を見ているのデュークと店員に目が止まる。
 目を合わせると店員は失礼しましたと焦りながら走り去っていった(きっと疲れているんだろう。店はほぼ満席だ)が、デュークは何故かその場を動かない。

「……なにしてんだよ」
「……逆に訊ねるが何をしている」
「食うもん決めてんだよ。お前もそこ座れ」

 促せば向かいに腰を下ろしたが、目の前に置いてあるメニューに手を伸ばさないデュークにユーリは首を傾げた。

「お前、まさかこういうとこ初めてか?」
「……」

 無言。
 どうやら初めてらしい。
 まぁ、考えてみればそうかもしれない。
 相手は人間嫌いだ。こんな人気の溢れるところには来ないだろう。
 となると、食生活は自炊かと思った瞬間酷く心配になった。

「(コイツの食生活ってどんなんだ……?)」

 考えれば考えるほど心配になる。
 ……止めよう。
 余計な世話は焼かない方がいい。
 フレンのような味オンチでリタのような偏食家でないことを祈るばかりだ。

「……荷物はこっちにも置いていいぜ」
「助かる」

 置場に困っていたやたら買い込んである食品は、受け取った際にチラリと見てみたが特に偏ってはないようで少しほっとする。

「とりあえず、この表の中から食べたいもの選んでくれ」

 メニュー表を差しそう言えば、手にとり眺め始めた。
 決めたのか、数分足らずで表を机に戻したのを見てからユーリはふとデュークに訊いた。

「お前、作法だとかなんだとか気にする方か?」
「いや……何故だ?」
「別に、こっちの話。……そこのお姉ーさん!」

 丁度こちらを見ていた店員に声を掛けるとすぐに寄ってきた。

「お決まりですかぁ?」
「ああ。コレと……お前は?」
「……」

 無言で指した先を見ると青菜を使ったまぁまぁ健康に良さそうなスパゲッティだ。
 妙な既視感があるのはたぶんフレンが以前頼んでいたものに似ているからだろう。

「はい。ほうれん草と茸のクリームスパゲッティと、青菜とベーコンのパスタですね。お飲み物はいかがなさいますかぁ?」
「水でじゅーぶん」
「私も、いい」
「かしこまりました。しばらくお待ちくださぁいv」

 さてとてユーリは暇な時間を潰すべく、目の前の無愛想な男(誰かが聞いたらなにか言われそうだ)と何を話そうか等とぼんやり考えた。
 これから自分の身に起きる事など知るよしもなく……。