「あれぇっ!?ユーリ、帰ってきてたの?」
食事を取るために下に下りると、接客をしていたテッドが目を丸くして裏返った声まで出して驚いた。
「帰ってきたってなんだよ。ずっと上に居たよ」
「え、じゃあ、ご飯どうしてたの?」
席に着いたオレとカロルの前に冷水を置いてメニューを開く。
オレは適当に上から頼み、カロルは要らないと断っていた。
「だから、食いに来たんだろ」
「へ、あ、うん?」
首を傾げながらわかったと器用に頷いて、テッドは厨房へ向かった。
「あ、ボク、テッド手伝ってくるよ」
「そうか?」
珍しいことを言うものだと思いながら、冷水を喉に通した。
一度口に付けると止まらず、コップ一杯は直ぐに飲み干してしまった。
ちっさい看板娘に水のお代わりを頼んで二人を待った。
「ねぇ、なにか知らない?」
「知らない?って言われてもこっちが聞きたいよ。あの白い人はこの間帰ってきたと思ったらまたラピードとどっか行っちゃったし」
「この間って?」
「四……、五日前かな。ユーリもそれっきり顔出さないから一緒に行ってたんだと思ってたよ」
「……挨拶もなく?」
「ユーリにしては珍しいなとは思ったけど、物音もしないしご飯も食べに来ないし、昼間も見かけないからさ。……ホントに上に居たの?」
「居たよ。床に寝てたけど……」
「じゃあ昨日の夜にでも帰ってきたのかな」
「……どうだろ……」
「ラピードと白い人はいつ帰ってくるんだろ。うちの母さんが二人にプレゼントがあるんだって言ってたのに……」
「……もう、帰ってこないかも」
「ええっ!まさか喧嘩したの?」
「違うよ。実は……」
「じゃあな、テッド。暫く帰ってこないから」
「うん……」
「いつも無駄にある元気はどうしたんだよ」
「なんでもないよ」
腹を満たして店を出る前。
食事を運んできてから萎んだ様子のテッドはそれから目を合わせてこない。
「えっと、元気で、ね。母さんには伝えておくから……」
「おお、お前もその顔いい加減にしないと女将さんに怒られんぜ」
「……うん」
「ユーリ、行こう」
「ああ」
カロルが手招きする。
そういえば仕事の内容だとか、詳細は全く聞いていない。
まぁ、それくらい道中聞けばいいか。
「橋向こうでジディスが待ってるよ」
「ん、わかった……」
「……ユーリ?」
ふと。
なんとなく、宿の上、部屋を見上げた。
部屋は借りたままだが、あの部屋には今は誰も居ないんだなと当たり前の事を思う。
――誰も居ない、寂しい部屋。
「ユーリ……」
「悪い。なんでもない」
例えるなら。
なにか、大切なものを忘れてきてしまったような、なにか足らない気がする。
そんなことはない。
即座に否定する自分に従って背を向けた。
けど、
――行ってくる。
誰かに向かって、心の中で呟いた。言われた、?
大切な忘れ物を預けているような、居もしない大切な誰かに。