やめた日
「アンタ、何考えてるんだ?」
男の言う『家族』が書類上だとしても、便宜上だとしても、だ。
「邪魔者作って何がしたいんだ」
「邪魔者?」
訝しげに眉を寄せ、小首を傾げた男に苛立つ。
「オレは別に構わねぇけど、オレなんかがいたらヤることヤるときアンタも、相手だって困まんだろ?」
嗤いながら言ってやれば、この男も流石にわかるだろう。
いっそ叩き出してくれりゃいい。
そう思ってたのに、男はますます首を傾げるだけだった。
「……私は別に、邪魔だとは思わんが……相手とはなんの相手だ」
「なんの相手って……」
何故ここまで言って通じないのか逆に聞きたい。
しかし、刹那閃いた考えによってそういうものなのかもしれないと思い直した。
オレとは違って綺麗だから、そっちに話が繋がらないのだろう。
「……女、」
「何?」
「オレがここにいたら、女、呼べないだろ。それともアンタが通うのか?」
自分で言っておきながら、アレだが、どうもなんだか変な台詞だ。
しかし他に言い様がない。
実際、ここに女が来ていたのだから。
自分が来ているときは居なかった。
気配すら無かったが、確かに居たのだ。
この男は普通なんだろう。
『男を買う』意味もわからない、綺麗な奴なんだ。
オレと違って、普通なのだから、綺麗なのだから、ちゃんと女を優先するべきだ。
――オレじゃないんだ。
「……どっちにしろ、邪魔だろ。オレなんか居たって、……逆に、アンタが気にしなくたって相手が気にするかもしんないぜ」
自慢でもなんでもないが顔立ちが良い方に分類される男、しかも成人してる奴を急に傍に置くだなんて、普通に考えても変だろう。
オレのせいで、迷惑を掛けるのは御免だ。
「だから――」
「一つ確認だが」
人の台詞を遮り男が言った。
「お前はここに居ても構わないと言ったか?」
随分と前の話題を出されて呆けてしまった。
「……そりゃ……、言ったけど……」
言ったがそれはなんの弊害もない場合の話であって、
「なら問題ないな。良かった。今日から此処がお前の家だ」
一人真顔で、満足そうに頷く男の様子に、つい怒鳴り声を上げそうになった瞬間。
「デューク、いますか?」
チャイムと共に、女の声が聞こえた。
頭が真っ白になった。