やめた日

 

 どうしたものか。
 どう答えればいいものか。
 悩んでいると、男は再び言い重ねた。

「何故、出ていこうとする?」

 男の目は真っ直ぐオレを見ていて、――辛い。
 無視してこの場から走り去ることもできたかもしれないが、それはできなかった。
 真っ直ぐこっちを見てくるあの目から逃げたいのに、足がまるで動かない。
 訳がわからない。

「……どうした?」

 何故かって?
 女がいるのわかった。
 それで充分な理由じゃないか。
 それが理由だ。
 それを言えばいい。
 言いたいのに。
 違うと、そうじゃないと、なんでそう思う。
 訳がわからない。

「……私では、いけないのか」
「……ぇ?」

 ポツリと男が溢した。
 ふと、弾みで外していた目を男に向けると、男は何故か……なんだろう。頼り無いような、……なんなのか、そう。
 子供のような顔をしていた。

「……なにが?」

 思わず聞き返してしまった。
 今まで、と言っても出会ってから少ししか経ってないが、それでも、見たことの無い男の様子に口走った。
 その問いに、男はやっぱり真っ直ぐこっちを見ながら答えた。

「お前と、『家族』になるのは、私ではいけないのか?」



 どの意味で言っているのかわからなくて、ほんの一瞬だけ、勘違いした。