やめた日

 

 ああ、思い出した。
 一人で過ごす真夜中にふと頭に湧いて出てきたのは「理由」だ。
 なんで、男と夜を共にしていたのか。
 金を貰えるのは二の次三の次だった。
 いつの間にかいかに金を多くふんだくるかになっていたが、最初の理由は違ったのだ。
 そう、最初。
 ああでももうどうでもいい。
 いろいろ放棄し始めた頭には望んでもいないのに、一枚の写真のような記憶が浮かんでは消える。
 振り払うように勢いよく振った頭に、仲睦まじい男女ではなくふと札束が浮かんだ。
 ――ああ、返さないと。
 いったいどこから出てきたのかと言いたくなるような大量の札束。
 それを詮索する権利は無かったが、ここにあるのは目の毒だ。
 使ってしまうという選択肢はない。
 だって終りだ。
 これを返したら、終り。
 綺麗さっぱり、なんにもなかったことになるのだ。
 ――元々、なんにもなかったのだから。

「あぁ……」

 意味もなく息を吐いて、天を仰ぎなにも無い天井を見上げてはまた息を吸い吐き出した。
 ――終りだ。



 しかし、足は酷く重く、眠れない夜は無駄に続いてしまった。